テスラの最新バッテリ技術を見る

2018年3月20日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications  


テスラがその有名なギガファクトリーで製造している最新のバッテリ技術について簡単に見てみましょう。ここでは、電気自動車(EV)およびグリッドエネルギーストレージアプリケーション用の高出力バッテリについて説明します。

新しい21700バッテリ

テスラは、新しい21700バッテリセルでバッテリ技術をアップグレードしています。このバッテリは、2017年前半以来ネバダ州にある同社のギガファクトリーで生産されています。CEOのElon Musk氏は2017年8月に、同工場ではすでに世界のどの工場よりも多くのバッテリを生産していると語っています。

Model SおよびModel Xで使用されているより小型の18650セルに代えて、Model 3では新しい21700リチウムイオンセルが使用されています。21700 (図1)は、直径が21mmで長さが70mmです(ちなみに、このタイプナンバーは性能や化学組成とは無関係です)。テスラでは、このサイズを21-70バッテリと呼んでいます。21-70セルの体積は24.245mm3です。これは18650セルより46%大型です。また、テスラの最高技術責任者であるJ. B. Straubel氏の発表によると、「エネルギー効率」も約15%向上しています。エネルギー密度は877.5Wh/Lと考えられ、セル容量は21.275Whです。ただし、充放電の深さは寿命に大きく影響し、充電コントローラの設定が両者のトレードオフを左右するため、エネルギー密度は非常に流動的な仕様です。
  

21700、20700、および18650サイズのバッテリセル

ほとんどのリチウムイオンバッテリは、最大充電電圧が4.20V/セルで、ピーク充電電圧が0.10V/セル低下するごとにサイクル寿命が2倍になると言われています。たとえば、4.20V/セルまで充電されたリチウムイオンセルは、通常は300~500サイクルを提供します。充電を4.10V/セルまでに抑えた場合、寿命を600~1,000サイクルに延長することができます。4.0V/セルなら1,200~2,000サイクルになり、3.90V/セルなら2,400~4,000サイクルが提供されます。ピーク充電電圧が低いほど、バッテリに蓄積される容量が減少します。目安として、充電電圧が70mV低下するごとに、全体の容量は10%減少します。絶対的な最大寿命を実現するには、最適な充電電圧は3.92V/セルです(これは化学組成によって変動します)。私が読んだレポートには、このスレッショルドによって電圧に関連するストレスがすべて除去されると書かれていました。さらに電圧を下げてもそれ以上の利点は得られず、むしろ他の問題が生じる可能性があります。

テスラの自動車に使用されているリチウムイオン21-70および旧型の18650セルは、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)の化学組成です。同社のPowerwallやPowerpackなどの据置き型エネルギーストレージ製品には、サイクル寿命が長い代わりにエネルギー密度が低いニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)セルが使用されています。新しい21700サイズのセルでどのような化学組成の設計変更が行われたかは(行われたとして)不明です。テスラは何もコメントしていませんが、より高い充電密度を実現するためにより多くのシリコンをアノードに追加したと噂されています。

バッテリメーカーのソニー、Efest、パナソニック、LG、およびサムスンは、すべて21700リチウムイオンセルを製造しています。Efestは、放電レート35A (max)の3700mAhセルを提供しています。サムスンのINR-21700-48Gセルは4800mAhおよび9.6A (max)の放電レートを提供し、サムスンはEV用の新しい「集積型バッテリモジュール」も発表しました。これらの製品に関する詳細情報は、現時点では見つけるのが非常に困難です。

リチウムイオンバッテリは、通常はこの総称的な名前で呼ばれますが、複数の異なるタイプが存在します。それらは多くの共通する特性とともに、それぞれ固有の特性も備えており、充電サイクル数もその1つで、1,500回から5,000回以上までの幅があります。

リチウムイオンバッテリの化学組成
コバルト酸リチウム Li-CoO2 LCO 携帯電話、ラップトップ、カメラ
リチウムマンガン酸化物 Li-Mn2O4 LMO 電動工具、医療、ホビー
リン酸鉄リチウム Li-FePO4 LFP 電動工具、医療、ホビー
リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物 Li-NiMnCoO2 NMC 電動工具、医療、ホビー
リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物 Li-NiCoAlO2 NCA 電気自動車およびグリッドストレージ
チタン酸リチウム Li4Ti5O12 LTO 電気自動車およびグリッドストレージ

グリッドエネルギーストレージシステムのバッテリ

テスラはエネルギーストレージに多額の投資を行っており、民生用Powerwallバッテリおよびグリッド最適化用のはるかに大型のシステムを提供しています。最近、同社は21700サイズのバッテリを使用する非常に大規模なシステムを発表しましたが、それは皆さんのご想像を超えたものです。

南オーストラリアはアメリカの州と同様の州ですが、より広大(379,725平方マイル)で、乾燥し、高温です。州都はアデレードで、州の人口の75%が同市に住んでいます。テスラはそこに世界最大のバッテリエネルギーストレージシステム(ESS)を正式に納入しました。

テスラのエネルギーストレージを使用する南オーストラリア州ホーンズデール蓄電施設

テスラのエネルギーストレージを使用する南オーストラリア州ホーンズデール蓄電施設

100MW/129MWhのホーンズデール蓄電施設は、再生可能エネルギーを統合して309MWのホーンズデール風力発電所に対するバックアップ電力サービスの提供を目指すという南オーストラリア州の計画の一部です。オーストラリアのエネルギー市場オペレータのリーダーであるAudrey Zibelman氏によると、このESSは2017年11月24日の朝に初めて稼働し、2分後に31MWに到達しました。厳しいスケジュールに対応するために、テスラはパートナーであるパナソニックや自社のギガファクトリーを使わずに、同システム用の21700サイズバッテリをサムスンから入手しました。これは明らかにEV製造への重点的な取り組みが理由だと思われます。

バッテリエネルギーストレージシステムは、最新の電力グリッドを実現する技術です。これらのシステムはグリッドの信頼性を高め、風力や太陽光などの増大が進む負荷変動およびリソース変動に対するグリッドオペレータの管理能力をサポートします。さらに、太陽光発電や風力発電とESSを組み合わせて使用するマイクログリッドシステムは、遠隔地で高信頼性の電力を提供することができます。これは、世界の健康と福祉に極めて大きい影響を与える可能性を秘めた、非常に大規模な市場です。