ポータブル電子機器からより多くを引き出す

2019年3月12日

Christine Young  筆者: Christine Young
 ブロガー、マキシム・インテグレーテッド 


掌に―十分な余裕を残して―収まる電子ガジェットは、非常に複雑な多くの機能を実行します。バイタルサインを継続的に監視する腕時計型のフィットネスバンドから、リアルタイムで言語翻訳を行うヒアラブルまで、これらの高度な機器には以下の点に関する困難な設計上の考慮事項があります。

  • PCB面積
  • 発熱
  • バッテリ寿命
  • ノイズ
  • 新機能による電源レールの増加
  • 市場投入までの時間

マキシムのモバイルソリューション事業部門の製品定義担当テクニカルスタッフ主要メンバーであるGaurav Mitalは、従来のより大型の電源ソリューションと比較して、単一インダクタ、マルチ出力(SIMO)バックブーストアーキテクチャを使用することは、今日のスマート、コネクテッド機器の多くが直面する一般的な課題への対応に役立つと述べています。Mitalは最近、Hackster.ioと共同で45分間のウェブセミナー「Why Portable Electronics Perform Better with SIMO PMICs (なぜポータブル電子機器の性能はSIMO PMICによって向上するか)」を司会し、この技術について解説しました。

Mitalは次のように述べています。「IoT機器は爆発的に増加しており、民生用機器がこの成長を促進しています。ウェアラブル、ヒアラブル、リモコン、バイタルサイン監視などがあります。私たちは小型のソリューションを求めています。耳に入れたり目の近くに装着する機器が登場しているため、熱を非常にうまく管理する必要があります。あまり頻繁に機器を充電したくはないので、充電サイクル間の時間を延ばすことが可能なら、自分が使っている製品もその特長を備えて欲しいです。次に問題になるのがノイズで、ノイズ検出を行う場合、それらは体から取得する非常に小さい信号であるため、電源ソリューションによってノイズが増えないようにする必要があります」。

図1. イヤホンやその他多数のヒアラブル、ウェアラブル、およびIoT機器は、SIMO PMICがこれらの小型、ポータブル電子機器に提供するバッテリ寿命延長の恩恵を受けることができます。

より高い効率、より小型のサイズを実現するSIMOアーキテクチャ
ポータブル、コネクテッド機器は、一般的にリチウムイオンチャージャ、5Vの近距離通信(NFC)/センサー、1.85VのBluetooth®とオーディオ(低ノイズ)、および1.2Vのマイクロプロセッサなどのコンポーネントを備えています。これらの負荷は、モノのインターネット(IoT)機器で広く見られます。これらのレールの出力電圧は一般的に1.2V~5Vの範囲で、機器によってはさらに広範囲です。高いシステム効率、小型ソリューション、および低自己消費電流は必須です。Mitalは、これらの要件に対応する方法として、SIMOアーキテクチャを備えたパワーマネージメントIC (PMIC)を紹介しました。特に、リニアチャージャ、3つの電流シンク、電源シーケンス、150mA低ドロップアウトレギュレータ(LDO)、およびI2Cを備えた3出力SIMOバックブーストレギュレータは、複数のプラットフォームにわたる拡張性を備えた完全なシステムソリューションの役割を果たします。彼は次のように述べています。「1つのソリューションでシステム全体に給電することができれば、他の部品の特性評価を気にする必要がありません」。

従来のスイッチングレギュレータトポロジでは、各スイッチングレギュレータが各出力用に個別のインダクタを備える必要があります。インダクタは大きくて高コストのため、小型の設計に最適ではありません。それに対して、バックブーストSIMOアーキテクチャでは、1つのインダクタが広い出力電圧範囲にわたって最大3つの出力電圧を安定化します。出力が特定のスレッショルドを下回ると、それがトリガとなってインダクタがその出力への対応を行います。各出力は異なる電圧および負荷を備えているため、この対応処理は順次的ではなくオンデマンドで発生すると、Mitalは説明しました。このアーキテクチャは、効率を維持しながらソリューションを小型化します。

効率の優位性を強調するため、Mitalは1つのインダクタを備えた従来型の電源構成を提示しました。この場合、90.2%という効率はシステム全体ではなく個々のレギュレータの効率のみを反映しています。バッテリ電流は49mAで、3.3V LDOによってVBATT MINは3.4Vで、このシステム全体の効率は69.5%になります。次に、Mitalはこのシナリオを単一インダクタを備えたSIMO電源構成と比較しました。この場合、バッテリ電流は43.4mA (比較すると5.6mAの節約)で、PMICの動作範囲(より多くの放電が可能)によってVBATT MINは2.7Vです。SIMOソリューションのシステム効率は78.4%で、従来型の電源構成より8.9%効率的です。

常時オン、低電力、および性能の向上
セッションの中で、Mitalはいくつかの使用例に注目して、SIMOアーキテクチャベースの常時オン、低電力PMICを使用した設計の優位性を示しました。たとえば、ノイズに敏感なヘッドフォンアンプの場合、電源のSIMO技術は出力電圧リップルを低減するための次のような手法に対応します。

  • 内蔵LDOと直列にバックブースト出力を配置することによるノイズの大幅な低減。ソリューションは集積型のため、部品の追加が必要になる心配は不要。
  • インダクタの電流制限を低減することによる出力電圧リップルの最適化
  • コンデンサをノイズに敏感なレールに追加することによるノイズ低減

ヘッドフォンアンプアプリケーションのテストセットアップ(図2)で、MitalはVDDおよびDVDDがLDOによって供給されるセットアップと、VDDおよびDVDDがSIMOおよびパワーパスチャージャを内蔵した超低電力PMICのMAX77650によって供給されるセットアップを比較しました。MAX77650はウェハレベルパッケージ(WLP) (2.75mm × 2.15mm × 0.7mm)で提供され、5.6µAの動作電流、0.3µAのシャットダウン電流、およびI2C対応インタフェースを備えています。テスト結果から、SIMO PMICを使用してオーディオコーデックに給電することによって、オーディオ品質に影響を与えることなくバッテリ寿命が延長されることが明らかになりました。テストした帯域内スペクトル入力信号は、無信号、-60dBFS、および-3dBFS (公称32Ω負荷)です。帯域内スペクトル高速フーリエ変換(FFT)は、ディスクリートのLDOによって供給されるVDDおよびDVDD と、SIMO PMICによって供給されるVDDおよびDVDDで、ノイズおよび周波数成分がほぼ同等であることを示しています。ノイズフロアおよび高調波成分は、SIMOでヘッドフォンアンプのVDDおよびDVDD電源を駆動しても変化しません。

図2. 左はテストセットアップ1で、LDOによってVDDおよびDVDDを給電。右はテストセットアップ2で、SIMO PMICのMAX77650によってVDDおよびDVDDを給電。

高集積SIMO PMICがどのように小型、ポータブル電子機器の消費電力を低減しバッテリ寿命を延長することができるかを示すために、Mitalは他にもいくつかの使用例について解説しました。図3に示すように、スマートイヤホンは複数のレールを備えた真のワイヤレスソリューションです。左右両方のイヤホンが同じ機能を必要とするため、MAX77650を両方に使用することができます。Mitalは、ユーザーが1つのプラットフォームから別のプラットフォームにファームウェアを容易に移植することができるように、マキシムは異なるSIMO PMICファミリでも一貫したレジスタマップを維持するように努力していると説明しました。

図3. スマートイヤホンは真のワイヤレスソリューションで、両方の側でSIMO PMICを利用して複数の電源レールに対応することができます。

ヒアラブルやウェアラブル以外にも、SIMO技術を利用することができる、より大型のアプリケーションがあります。ヘッドギア形状の睡眠補助器具は、複数のセンサーによって収集される大量のデータ用に多くの処理パワーを必要とします。このアプリケーションのメインシステムは、13のレギュレータ、8つのGPIO、リアルタイムクロック、およびマルチコアアプリケーション用の柔軟な電源シーケンスを備えた完全なシステムPMICのMAX77714を利用することができます。この設計のサブシステムは、SIMO PMICを利用して加速度計用、オーディオ用、および近接センサー用の電源レールを提供することができます。両方のPMICが組み合わされて、この高性能ソリューションにおいてより多くの処理を駆動することができると、Mitalは述べました。

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