オーディオDACやデジタルアンプでSN比よりダイナミックレンジの仕様が重要な理由

2018年5月17日

Christine Young 筆者:Christine Young
ブロガー、マキシム・インテグレーテッド  


オーディオ用アナログ-デジタルコンバータ(ADC)、デジタル-アナログコンバータ(DAC)、またはデジタル入力アンプの信号品質を比較するために最も一般的に使用される仕様の1つは、標準規格のAES17ダイナミックレンジ測定です。この試験は、-60dBFSレベルの信号がある状態でのノイズフロアを調べます。類似した、代替となる測定値として、フルスケール信号とアイドルまたはゼロ入力のノイズフロアとを比較する信号対ノイズ比(SN比)測定があります。一見すると、これらの2つの仕様は同様の測定値を提供するように思えますが、実際にはSN比の測定値は非常に誤解を招きやすいものです。

低ノイズDACやデジタル入力アンプの多くはミュートまたはスケルチ機能を内蔵しており、入力信号がアイドル(ゼロ)時に出力を非常に低ノイズにすることが可能です。これは優れた機能ですが、ノイズフロアが向上するのは信号がないときのみです。アンプによっては、入力信号がアイドルから最小レベルの可聴信号に変化するときノイズフロアが3dB以上上昇し、非常に耳に付く可能性があります。ダイナミックレンジ仕様は、フルスケール信号とアクティブ(非ミュート)信号でのノイズフロアを比較することによってこの問題を防止します。低アイドルノイズ用のミュート機能にはもう1つの好ましくない副作用があって、ミュートへの移行および復帰時に出力DC電圧の変化によってしばしば可聴クリックポップが発生します。

DACまたはデジタル入力アンプの電気的特性の表に標準AES17ダイナミックレンジ測定値の仕様が含まれていない場合、多くは特に好ましくないアクティブノイズフロアを隠すためにサプライヤが意図的に行っています。これらの製品に対する見識のある顧客なら、自分たちのアプリケーションでの使用を検討する前に、サプライヤに自社製品のダイナミックレンジ性能を提供するように求めるでしょう。表1に、デジタルパルスコード変調(PCM)入力D級パワーアンプのMAX98357と、それに最も近い競合製品との比較を示します。

タブレットコンピュータタブレットは、AB級のオーディオ性能をD級の効率で提供するMAX98357の利点が発揮されるポータブル電子機器の1つです。

表1. MAX98357と競合製品の比較

仕様 MAX98357 最も近い競合製品
データシート記載のノイズフロア 22.8µV 24.0µV
起動時のノイズフロア測定値 22.8µV 22.8µV
信号印加後のノイズフロア測定値 22.8µV 35.6µV
データシート記載のダイナミックレンジ 103.5dB N/A
ダイナミックレンジ測定値 103.5dB 100.3dB

参考文献
www.ap.com/technical-library/more-about-signal-to-noise-ratio-and-dynamic-range/

MAX98357A~MAX98357Bのデータシート