適切なコンバータによって1つのバッテリで設計を動作させる

2017年7月18日

著者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications


ポータブル機器、特に平均電力が非常に低いものを設計する場合、1つのバッテリで動作させてはどうでしょう?多くのアプリケーションで、2つまたは3つの1次電池を使っているのを目にします。容易に入手可能な、低コストのスイッチングレギュレータチップで十分に対応可能であることを考えると、それは非常に大きな無駄だと思えます。

もちろん、それらの複数のバッテリによって電圧は上昇しますが、優れた、高効率のブーストコンバータでも同じことが可能で、良好な安定化電源を維持してくれます。それは本当に素晴らしいアプリケーションのアイデアであり、効率と小型サイズが提供されます。

3.3V電源が必要で、例によって、バッテリから可能な限り多くのエネルギーを取得したいとします。1つの標準タイプのAAAまたはAAサイズの1次電池(充電式でないもの)を使うこともできます。アルカリまたはリチウムのいずれの場合も、これらの電池はあらゆる充電式セルより大幅に高いエネルギー密度を備えています。

アルカリ電池はリチウムより低コスト(1/3)ですが、内部抵抗が大きいため、低い放電レートの方が良好に動作します。また、エネルギー密度は約210Wh/kgで、1.5Vリチウム1次電池(Li-FeS2)の約1/2です。内部インピーダンスが高いため、アルカリ電池の出力電圧は高負荷において低下します。デジタルカメラ(高ピーク負荷)で使用したアルカリ電池には、キッチン時計を2年間動作させるのに十分なエネルギーが残っています。リチウムLi-FeS2タイプの電池(1.5V)の一例として、Energizer® Ultimate Lithiumブランドがあります。これらの電池はエネルギー密度が400WH/kgで、比較的ローインピーダンスです。

2つのタイプの3.6Vリチウムイオン1次電池

もう1つのタイプのリチウム電池は、塩化チオニルリチウム(LiSOCI2またはLTC)です。このタイプは通常はドラッグストアでは販売されず、Li-FeS2タイプよりかなり高価ですが、最大500WH/kgのエネルギー密度を提供します。公称電圧は3.60V/セルで、最も堅牢なリチウム金属電池の1つです。LiSOCI2セルは1.5V Li-FeS2タイプよりさらに高いエネルギー密度を提供します。

また、LiSOCI2 3.6V電池にはボビンと螺旋巻きの2つのバージョンがあることも説明しておく必要があります。ボビンタイプの方が内部インピーダンスが高いものの、より高いエネルギー密度と非常に低い自己放電率(年1%以下)を提供します。この低い自己放電率は、非常に低電流のアプリケーションの場合ボビンタイプが最大40年間動作可能であることを意味します。

3.6Vリチウムイオンバッテリの使用が一般的になっています。このタイプのバッテリの主な欠点の1つは、バッテリ電圧が2.7V~4.2Vの範囲のため、ステップアップ/ステップダウンDC-DCコンバータを使用して標準の3.3V電源を作る必要があることです。

ステップアップ/ステップダウンコンバータの組み合わせに使用可能なトポロジは何種類かありますが、最も一般的なのはシングルエンド1次インダクタンスコンバータ(SEPIC)です。これは非絶縁型の電圧コンバータで、珍しい非反転構成ですが、反転構成にすることも可能です。

見落とされる場合が多いもう1つの選択肢は、ステップアップコンバータの後にロードロップアウト(LDO)レギュレータを配置する方法です。ステップダウン機能にリニアレギュレータが使用されるため、一般的には効率が低いと考えられています。しかし、1つのリチウムイオンバッテリから3.3Vを作る場合、この回路の効率は同等のSEPIC回路の効率を上回ることが可能で、部品数、コスト、および基板スペースの削減という追加の利点があります。

2つのブーストレギュレータの例

マキシムのMAX17220~MAX17225はブースト(ステップアップ) DC-DCコンバータICのファミリで、3つのパワーレベルがあります(回路図は図1を参照)。これらのICはピークインダクタ電流が225mA、0.5A、または1Aで、0.40V (min)のVINを特長とします。これらのICは超低自己消費電流で、マキシムがTrue Shutdownと呼ぶ、出力を入力から切り離して順方向または逆方向の電流をゼロにする機能を備えています。これらのICの出力電圧は標準1%抵抗で選択可能で、デバイスはパワースイッチを内蔵しているため、回路設計に必要なのは4つの外付け部品のみです。


図1. MAX17220~MAX17225の基本回路

これらのICは、非常に小型の総ソリューションサイズとおよび全負荷範囲にわたる高効率(最大95%)を提供します(ブロック図は図2を参照)。これらのICのスイッチング周波数は最大2.5MHzで、長いバッテリ寿命が不可欠なバッテリ給電アプリケーションに最適です。これらのICは、固定オン時間、電流制限、パルス周波数変調(PFM)制御方式を使用します。これらのICの6ピンµDFN (2mm x 2mm)または6ピンWLPパッケージ(0.88mm x 1.4mm)は、容易なPCBレイアウトに役立ちます。一部のバージョンは、起動後イネーブル過渡保護(ETP)を備え、最小400mVの入力電圧まで出力の安定化を維持することができます。最小起動電圧は0.88Vです。

図2. MAX17220~MAX17225のブロック図

MAX1705およびMAX1706は高効率、低ノイズ、ステップアップDC-DCコンバータで、補助リニアレギュレータ出力を備えています。前述のように、3.6Vリチウムセルは寿命全体の電圧範囲をカバーするために通常はバックブーストトポロジが必要ですが、これらのコンバータはブーストおよびリニアレギュレータを組み合わせており、リニア出力は非常に低ノイズの電源でもあります。これらのデバイスは300kHzの同期整流PWMブーストトポロジを使用して、1~3のNiCd/NiMH電池や1つのリチウムイオン電池などのバッテリ入力から2.5V~5.5Vの出力を生成します。これらのデバイスは全動作電圧範囲にわたって安定化出力を提供します。MAX1705は1AのnチャネルMOSFETスイッチを備え、MAX1706は0.5Aのスイッチを備えています。最小VINは1.1Vで、これらのデバイスは1µAのシャットダウンモードを備えています。

どちらのデバイスのリニアレギュレータも最大200mAを供給します。効率を向上させるトラックモードは、ステップアップDC-DCコンバータの出力をリニアレギュレータの出力より300mV高い値に低減します。これらのデバイスは、同等の非同期整流コンバータより5%高い効率を提供します。これらのデバイスは、軽負荷時の効率を向上させるパルス周波数変調スタンバイモード、および1µAのシャットダウンモードを備えています。どちらのデバイスも16ピンQSOPパッケージで提供され、プッシュオン/プッシュオフ制御用の2つのシャットダウン制御入力、および電圧モニタとして使用可能な独立したコンパレータを備えています。これらのデバイスは8ピンSOと同じスペースに実装可能な16ピンQSOPパッケージで提供され、標準または工業用温度範囲で動作します。MAX1705の評価キットを使用して、多種多様なバッテリ給電の設計に対してこれらのICを検討することができます。