ノイズを抑制する:電源設計でEMI規格を満たす

2018年6月27日

Thong Huynh 筆者:Thong "Anthony" Huynh
インダストリアルパワー事業部門アプリケーション担当テクニカルスタッフ主要メンバー、マキシム・インテグレーテッド


多数の電子部品を一緒に動作させると、ノイズの問題が生じることがあります。ノイズを抑制し、どの部品の動作も別の部品の動作に悪影響を及ぼさないようにするには、どうすればよいでしょうか。それには、電源設計において電磁干渉(EMI)を管理する必要があります。そして、その対策は早めに講じるのが最善です。対策が遅れるほど、EMIの抑制は難しく、また高コストになります。詰まるところ、電源設計の全面的な見直しを招くことなど誰も望まないでしょう?

ブレンダーを回した時にラジオの音声にノイズが混じる。飛行機が上空を低空で通過した時にアナログテレビの画面に線が入る。電子レンジがWi-Fi信号に影響を及ぼす。これらはすべて、私たちが日々の生活の中で出会うEMIの例です。EMIが機器の動作に及ぼす悪影響の度合いは、単なる不快感から実際の損害までさまざまであり、影響を受ける回路が設計された対象のアプリケーションによって異なります(たとえば、テレビと、自動化された工場内のプログラマブルロジックコントローラの違い)。こうしたことから、電子機器の性能に適用されるEMI規格を規定する規制機関が存在します。

デジタル電子機器の電磁環境適合性に関する2つの主要な(そして、かなり似通った)規格は、欧州のCISPR 22 (国際無線障害特別委員会(CISPR)が策定)と、米国のFCCパート15 (米国連邦通信委員会(FCC)が策定)です。以下、このブログ記事ではCISPR 22を取り上げます。

TV低空を飛ぶ飛行機や近くにある家庭電化製品からのEMIが、アナログテレビの信号に悪影響を及ぼすことがある

EMI規格への適合を初回で達成

およそシステムエンジニアなら、初回設計でEMI規格への適合を達成したいと思うものです。入念に計画された電源ソリューションなら、それは可能です。入念に計画された電源ソリューションの条件とは、どのようなものでしょうか。適切なフィルタ、低EMIの部品、低EMIのパワーレギュレータICや低EMIのパワーモジュール、優れたPCBレイアウトやシールド手法は、いずれもその一部です。

CISPR 22 EMI規格(欧州ではEN 55022と呼ばれることが多い)は、下記のものを対象とします。

  • クラスB:家庭環境での使用を目的とし、CISPR 22クラスBの放射要件を満たしている設備、装置、器具。
  • クラスA:CISPR 22クラスBの放射要件を満たさないものの、そこまで厳格ではないCISPR 22クラスAの放射要件に適合している設備、装置、器具。クラスAの機器には次の警告文を表示するものとします。「これはクラスA製品です。家庭環境では、この製品は無線干渉を引き起こす恐れがあり、その場合、ユーザーは適切な対策を講じなければならない可能性があります」。

EMI試験では、伝導性放射と放射妨害波を評価します。伝導性放射試験は150kHz~30MHzの周波数範囲で実施されます。一方、放射妨害波試験は、より高い30MHz~1GHzの無線周波数範囲で実施されます。

ここで、1つの事例としてスイッチング電源を取り上げ、そのノイズ源をどうすれば抑制することができるかについて検討しましょう。このタイプの電源は(伝導性および放射性の)電磁エネルギーとノイズを生み出すとともに、外部の妨害要因からの電磁ノイズによって影響される場合もあります。伝導性放射は、主にコンバータの入力における電流波形の急速な変化(di/dt)によって引き起こされます。放射EMIは、30MHz以上の高周波成分を持つ(回路の電流ループによって生成された)急速に変化する磁場です。フィルタやシールドが適切に施されていない場合、この磁場の変化は、付近にある他の回路や機器に結合し、放射EMI影響を引き起こすことがあります。

EMIを最小限に抑えるための一般的方法

EMIを最小限に抑えるための一般的な手法には、ラインフィルタ、電源設計、適切なPCBレイアウト、シールドなどがあります。ラインフィルタの手法では、π型フィルタを入力ソースとパワーコンバータの間に配置することで、パワーコンバータからの伝導性放射を低減します。電源設計に関しては、バックコンバータにおいて、入力における高di/dtの電流エッジは、規制上の伝導範囲内で高周波の高調波EMIを生み出します。これらの電流ループの面積を小さく保つと、磁場強度が最小限に抑えられます。これらの電流エッジを緩やかにすると、スイッチングレギュレータの高周波の高調波成分は減少しますが、緩やかな遷移がエネルギーの浪費を招き、レギュレータの効率に影響を与えます。連続コンダクションモードで動作するブーストコンバータは異なった動作になります。この場合は、入力電流がバックコンバータの場合よりも連続的であるため、ブーストコンバータの入力における伝導EMI成分は低減されます。PCBレイアウトの観点から見ると、高di/dt電流ループの最小化やファラデーシールドの利用など、EMIノイズ源を最小限に抑えるために検討すべきさまざまなベストプラクティスがあります。優れたPCBレイアウト方式を適用すれば、スイッチングエッジを緩やかにすることでパワーコンバータの効率を損なわずに、EMI規格を満たすことができます。低EMIのパワー部品(インダクタなど)、パワーレギュレータ、およびパワーモジュールの採用も、良い影響をもたらします。マキシムのHimalayaレギュレータHimalayaパワーモジュールファミリは、低EMIのパワーインダクタを備え、優れたPCBレイアウト手法で設計されています。これらのHimalayaソリューションを利用すると、適合性について心配する必要がありません。マキシムは、最適なコストでCISPR 22 (EN 55022)を満たすことができるように、IC、モジュール、リファレンスレイアウト例についてあらゆる作業を行っているからです。

伝導EMIと放射EMIの比較検討、フィルタ、PCBレイアウトのベストプラクティスなどの詳細については、私の記事「EMI: Achieving CISPR 22-Compliant Power Solution (EMI:CISPR 22に準拠した電源ソリューションの実現)」(electronicsforu.com)をお読みください。