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機械学習はどのように設計サイクルを迅速化することができるか

2017年2月15日

Christine Young  著者:Christine Young
 ブロガー、マキシム・インテグレーテッド


最初に動作を検証することなく、電子回路の設計を生産に移行できたらいいのにと思っていませんか?多数のステップを伴うシミュレーションには多くの労力が必要で、市場投入までの時間に対するプレッシャーは過酷です。しかしもちろん、そんなことをするわけにはいきません。

シミュレーションベースの検証手順を合理化するための効果的な方法があったらどうでしょう?機械学習がその答えになるかも知れないと、イリノイ大学アーバナシャンペーン校電気&コンピュータ工学部のElyse Rosenbaum教授は言います。Rosenbaum教授は、より迅速で、より高精度のモデルベース設計、より高精度のシミュレーションベース設計検証、および製造上の変動に関する計算効率に優れたシステムレベル分析の促進を目指すCenter for Advanced Electronics through Machine Learning (CAEML)のディレクターも務めています。

Rosenbaum教授は、2月1日にDesignConで「Machine Learning: An Enabling Technique for Electronics Modeling and Design Optimization (機械学習:電子回路モデリングと設計最適化を可能にする技法)」という基調講演を行いました。適切な状況下では、機械学習が電子設計自動化(electronic design automation、EDA)を強化することができるというのが彼女の主張です。

Rosenbaum教授は、現代のEDAには以下のような限界があると強調しました。

  • マスク再設計(リスピン)を排除できていない。
  • 認定試験時に発生する不具合の多くは、モデリング能力の不足(および変動の可能性を高精度または計算効率の良い方法でモデル化することができないこと)が直接の原因になっている。
  • シミュレーションベースの設計最適化は限られた成功しか収めておらず、多くの場合、関係する設計変数が非常に多いため低速で実用性に欠ける。
  • 動作モデルは、現在のシミュレーションの能力不足にある程度対応する。しかし、これらのモデルを生成するための一般的、体系的手法が業界に存在しない。

Rosenbaum教授によると、それは以下の課題が原因になっています。

  • 入力空間の高次元性と、入力パラメータ間の相互関係に対する知識の不足
  • システムコンポーネントおよびサブシステムの物理的属性の可変性
  • 非直線性の高い応答曲面のサンプリングと表現の難しさ
  • コンポーネント間の電磁的またはその他の相互作用に関する先験的情報の不足

機械学習の登場

そこで機械学習の出番です。Rosenbaum教授によると、「機械学習」という語句を最初に使ったのは1959年のIBM Journal of Research and Development:「Some Studies in Machine Learning Using the Game of Checkers」だそうです。以来長年にわたって、そのさまざまな解釈が大衆文化の中で共有されてきました(スタートレックのエピソードで、カーク船長が「ただ座って、機械が動くのを見てればいいんだ」と言われたのをご記憶の方も多いでしょう)。Rosenbaum教授の見解では、機械学習は高精度の予測子を構築するための統計的学習理論の応用です。十分な訓練データがあれば、この方法はたとえ入出力間に非常に複雑な機能的関係がある場合および/または確率的効果がある場合でも悪影響を受けません。

機械学習のインフォグラフィック1人のアーティストがリアルタイムでDesignConでのRosenbaum教授の機械学習講演の概要を示すこのインフォグラフィックを作成しました。

「EDAは、今日機械学習が使用されている多くのアプリケーションよりも、機械学習に適したアプリケーションです」とRosenbaum教授は語っています。機械学習を使ってEDAをサポートするモデルを抽出することで、設計の最適化と市場投入までの時間の短縮が可能になり、エンジニアの職業生活が向上します。

EDAフローに適用可能な機械学習のアルゴリズムと分析には、さまざまな種類があります。いくつか例を挙げると、線形回帰、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク、カーネル法、および教師あり学習と教師なし学習などです。機械学習が、自己発熱を起こしやすい3D-ICの熱設計の最適化をどのようにサポートすることができるか考えてみましょう。Rosenbaum教授の説明では、ジョージア工科大学にいる彼女の仲間が初めて配電ネットワークの3D熱シミュレーションを実施し、結果の熱プロファイルを使用した回路シミュレーションによってクロックスキューを測定しました。彼らは、クロックスキューの要件に適合する設計を特定するまで、何度もシミュレーション手順を繰り返す必要がありました。研究者たちは、ベイズ最適化と呼ばれる統計的学習法を使用してシミュレーションの回数を削減しました。Rosenbaum教授によると、唯一の条件は関数を正確にその最小付近でモデル化する必要があることです。

Rosenbaum教授が解説したもう1つの例は、データによってモデル構造が決定される、サロゲートモデルベースの回路設計です。RFICの設計では、チューニングノブを含めるのが慣例です。しかし、SPICEシミュレーションを使用する場合、必要なシミュレーションの数が多くなりすぎるため、最適なチューニングノブのセットを特定するのが困難です。ノースカロライナ州立大学にいるRosenbaum教授の仲間は、RFICデバイスのサロゲートモデルを構築し、この方法を介して、彼らの性能仕様を満たす3つの特定のチューニングノブを備えた設計を特定しました。

多くの回路とデバイスに対応する状態空間モデルを使って、任意のシステムを近似表現することができる再帰型ニューラルネットワーク(RNN)も、EDAで有効な場合があります。RNNを使用して市販のバッファチップをモデル化した例では、RNNモデルがトランジスタレベルのモデル(HSPICEシミュレーション)より12倍高速にシミュレーションを実行したとRosenbaum教授は説明しています。

物理的モデルと経験的モデル

Rosenbaum教授の主な要点の1つは、機械学習がチップ設計にとって利点があるのは明らかですが、時と場所を選ぶのも確かだということです。「物理的モデルに価値があることを認めましょう」とRosenbaum教授は言います。「経験的モデルは、常に真の入出力関数の近似にすぎないことを忘れないでください。自分で容易に物理的モデルを導くことができる場合は、経験的モデルを使うべきではありません」。

明らかに、機械学習はチップ設計の工程に利点をもたらすとともに、IC自体にも利点があります。マキシムは、明確にその価値を理解しています。マキシムの技術の多くは、機械学習の手法を応用しています。マキシムは、社員向けに機械学習のコンペまで開催しています。