LEDコントローラでヘッドライトシステムの設計作業を簡素化する

2018年10月18日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications


自動車のヘッドランプへのLED照明技術の適用は、最近の非常に優れたデザインの登場に貢献しています―それほど代わり映えしない場合もありますが。LEDランプはデザイン部門にとって強みであり、性能面や安全面の向上も実現できます。さらに、LEDはエネルギー効率の面で従来のランプよりはるかに優れています。この場合、それはガソリン車の燃費向上や電気自動車の走行距離の延長を意味します。

パーキングランプやテールランプはほぼすべてLED化されている一方、ヘッドランプについては大量の電力を要する上に相当なドライバのデザイン作業を伴うため、LEDの導入はよりゆっくりと進んでいます。

1890年代の昔、自動車が登場してすぐに人々は夜間の運転を始めました。当時は石油(灯油)燃焼式のランタンを照明装置として使用していました。1908年、米国における最初の自動車ヘッドランプ用電球は炭素フィラメントを備え、内部は真空でガスが充填されていませんでした。世界初の標準電気式ヘッドランプは、1899年、Columbia Electricの自動車で導入されました。有名なPeerless Motor Company (クリーブランド)は、1908年、電気式ヘッドランプを自社製高級車の標準装備にしました。

Peerless Model 32 car

図1. 1911年製Peerless 45-HPモデル32はスタイリッシュなヘッドライトを装備していた(撮影:Alf van Beem氏)。

1908年10月1日、ヘンリーという名の男が最初のモデルTを世に送り出しました。フォードがモデルTのアセチレン/石油ランプをマグネト発電機で給電される電気式ヘッドランプに置き換えたのは、1915年になってからでした。1940年には、現代的なシールドビーム式ヘッドライトが標準になりました。その後の17年間は、政府が7インチの丸型ランプを義務付けました。1957年に法律が改正され、道路を適切に照らすことができるかぎり、さまざまなサイズと形状のライトを装備することが可能になりました。

2007年、最初のフルLEDヘッドランプが登場しました。今では、LEDヘッドランプは一般化しつつあります。標準的なフルLEDヘッドライトの消費電力は15W~18Wであるのに対し、ハロゲン電球ヘッドライトの消費電力は55W~65W、HID (高輝度放電)電球ヘッドライトの消費電力は約42Wです。ただし、LEDヘッドランプ後付けキットの中には、極めて大きな光量(25,000lm)を生み出し、大量の電力(60W)を消費するものもあります。入手可能なLEDヘッドライト交換電球をオンラインで確認してみると、価格は電球2個セットで9.50~239.00ドルです。ずいぶん幅がありますね。控えめに言っても、ヘッドライトの市場はやや流動的な時期にあることがわかります。

ヘッドランプ性能の検討

標準的なヘッドライト用ハロゲン電球の輝度は約1,300lmです。キセノンHID電球の輝度は、その2.3倍程度の約3,000lmです。HIDランプは点灯時により多くの電力を必要としますが、いったん点灯すれば、ハロゲンランプよりも大幅に少ない電力で動作します。大部分の車種では、HIDライトはロービームにのみ使用され、ハイビームライトは別途、ハロゲンライトで装備されています。ハイビームは瞬時にオン/オフする必要があり、HIDには向かないからです。一部の自動車では、ロービームとハイビームの両方にHIDが使用されていますが、上下に動くシャッターで操作する仕組みのため、遅延は生じません。

車載エレクトロニクスの設計者は、ヘッドランプ用のSMT LEDおよびLEDマトリクスチップについて、さまざまなサプライヤに目を向けています。最近のシングルSMT LEDチップは、2Wと350lmで175lm/Wの効率を達成しています。しかし、はるかに高出力のシングルLEDも利用可能です。

たとえば、CreeのXHP70B-00-0000-0D0HN240Hチップ(同社のX-Lampシリーズの製品)が挙げられます。この実装面積7.0mm × 7.0mmの製品は、85℃で1590lm、25℃で1751lmを発揮します。効率は約133lm/Wです。このランプはPCBレイアウトにより6Vまたは12Vに設定可能で、最大駆動電流は12Vで2.4Aです。テスト電流は1.05Aです。このランプは色温度が4000kで、CRIは80です。これらの高級な高出力ランプは、数量1,000個で単価が8ドル程度です。より低価格または高価格で多くのバージョン(ビン)が提供されています。ヘッドライトアセンブリに必要なのは、これら1590lmのチップ2つだけで、ハイビームを装備する場合は3つと考えられます。

おそらく、このアプリケーションで最も重要なLEDの利点は耐用期間です。このCree製品は、23,000時間の動作後に光出力の85%を維持すると予想されます。これは2.6年連続使用の場合であるため、耐用期間は15年であることがすぐにわかります。

照明に関するその他の設計上の考慮事項

設計者には、ほかにも考慮すべき事項があります。自動車では、必要な動作温度範囲は-40℃~+120℃です。また、空気中の水分や塩分、粉塵など、さまざまな気候的要素もあります。強い振動や衝撃応力、電磁波の影響があります。設計上、最も注意を要する分野の1つは、無線周波数干渉(RFI)です。LEDドライバの高速PWMスイッチングによる干渉のために、エンジン制御やデータバス、無線やUSB接続に至るまで、自動車に搭載された無数の電子システムのいずれかに問題が発生する可能性があります。RFIテストは不可欠です。

ハイビームでは夜間の視界として480フィート(約145メートル)、ロービームでは330フィート(約100メートル)以上が必要です。IIHS (米国道路安全保険協会)がテストした中型SUVのヘッドライトの半数以上は、ぎりぎりか不十分という結果でした。結果が良好な自動車は2車種のみで、HIDランプを使用していました。ビームの形状が非常に重要であり、LEDランプを搭載した多くの自動車では、ビーム形状をどう最適化すればよいかが理解されていません。IIHSのテストで評価された79種類のヘッドライトの半数以上は、グレアが強すぎます。出荷されるヘッドライトの多くは調整が不十分であるため、グレアが引き起こされ、高輝度LEDへの移行が意味をなさなくなる恐れがあると、IIHSは指摘しています。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の調査は、対向車のヘッドライトのグレアに関する苦情が非常に多いことを示しています。

LEDランプのもう1つの利点と考えられるのは、マトリックスライトです。マトリックス内の個々のランプは、狭く絞り込んで特定の領域を照らすことができます。対向車が走行する領域を暗くする一方で、その両側を照らすことも可能です。マトリックスヘッドライトは、米国ではまだ法的に認められていません。自動車メーカーは、さらに選択肢を広げるべく政府の承認を求めています。

ランプの制御

次に、LEDランプを可能な限り効率的に駆動し、強度を制御する必要があります。この作業に利用可能な多くのICがあります。ヘッドライトに適したLEDコントローラの優れた例の1つは、デュアルチャネル、同期整流、nチャネル、大電流バックLEDドライバのMAX20096/MAX20097です。これらのICでは、独自のPWM電流制御方式を採用しています。この制御方式では、ループ補償が一切不要で、ほぼ一定のスイッチング周波数が維持されるため、スイッチングノイズ/RFIの抑制が比較的容易です。インダクタ電流検出は、下側のスイッチングデバイスの電流をモニタすることによって実現されます。

これらのICは4.5V~65Vの入力範囲で動作し、各チャネルは2つの外部nチャネルパワーFETを駆動します。コンバータのスイッチング周波数は最大1MHzで動作可能で、各部品を小型にすることができます。LEDのPWM周波数は通常、200Hzです。

MAX20096はSPIインタフェースを備えています。このインタフェースにより、両方のチャネルの出力電圧/電流およびジャンクション温度を読み出すことや、出力電流のレベルを設定することができます。保護機能には、電流制限、過電圧保護、サーマルシャットダウンなどがあります。このデバイスは放熱特性を高めた32ピン側面濡れ性TQFNパッケージ(5mm × 5mm)で提供され、-40℃~+125℃の自動車用温度範囲での動作が保証されています。

MAX20097は、放熱特性を高めた28ピンTSSOPパッケージで提供されます。このデバイスは、SPIインタフェースを備えていない一方、オープンドレインのフォルトフラグ(FLTB)を内蔵しています。FLTBは、いずれかのチャネルでオープンストリング、短絡ストリング、サーマルシャットダウン、または過電圧アクティベーションが発生した場合にローになります。

図2. 最近のBMW車のヘッドライトアセンブリ(撮影:AutoPhography)。

これらのチップは、自動車のハイビーム/ロービームヘッドランプ、シグナルランプや日中走行用ライトに適しています。両デバイスとも消費電流は最大10mAで、アナログ調光制御をサポートしています。チップは、スイッチモードインダクタの平均電流を安定化します。LED電流は、アナログ入力またはPWMによるデジタル制御を使用して0~3Aに設定可能です。MAX20096では、SPIインタフェース経由でPWMによる調光も可能です。各チャネルを別々に調整することができます。PWM調光では輝度にかかわらず同じLED色が維持されますが、アナログ調光ではLED色が変化する場合があります。

ドライバ回路の効率は、2~4個の直列LED駆動時に約93%です。LEDヘッドランプの定格電力は通常35W~50Wであり、これらのICでは14V~48V電源を使用して対応できます。両バージョン向けに評価キットが用意されています。

選択可能なその他2つのチップ

マキシムは、シングルチャネルデバイスのMAX20090も提供しています。このデバイスは柔軟な駆動方式を備え、ブースト、ハイサイドバック、SEPIC、またはバックブーストモードの構成が可能です。このチップのPWM制御入力は、最大1000:1のLED調光比を実現します。MAX20090は、20ピンTQFNパッケージ(4mm × 4mm)で提供されます。

シングルチャネルコントローラのMAX20078は、4.5V~65Vの入力範囲で動作し、マキシム独自のPWM電流制御方式を使用します。このデバイスは、最大1MHzの高いスイッチング周波数で動作可能であり、超高速応答と疑似固定周波数同期バックレギュレーションを特長としています。このチップのハイサイドおよびローサイドゲートドライバは、2Aのピークソース/シンク電流能力を備えています。MAX20078は、16ピンTQFN (3mm × 3mm)または16ピンTSSOPパッケージで提供されます。

ドライバ回路の効率は、2~4個の直列LED駆動時に約93%です。LEDヘッドランプの定格電力は通常18W~40Wであり、これらのICではいずれも14V~48V電源を使用して対応できます。

LEDヘッドランプは、数年後にはすべての乗用車やトラックの標準装備となるに違いありません。LEDドライバの設計は、乗用車だけでなくバスや列車、トラクタ、等々にも適用されることになるでしょう。