5Gワイヤレスネットワークの速度と安全性をどうみるか

2019年5月14日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications 


5Gワイヤレス技術は、かつての「1G」のように、すべての人の生活に革命的な変化をもたらすのでしょうか。携帯電話の使用が、ほんの20年のうちにもたらした変化を考えてみてください。それは途方もないものでした。一方で、5Gセルラーが深刻な健康問題を引き起こすと考える人も数多くいます。

はっきり言って、私は5Gセルラー技術が企業や業界のリーダーたちが言うほど素晴らしいものになるとは思っていません。おやおや、これは驚きですね。しかしまた、多くの人が騒ぐほど人類に大きな害をもたらすとも思っていないのです。そして、確かにわかることは、ネット上には、この問題について実に驚くべき量の誤った情報があふれているということです。

5Gには、多数の次世代携帯電話やセルラーデータ転送技術が含まれます。3Gは実のところ第1世代のセルラーで、4Gはそれに基づいて開発されました。5GはWi-Fiと4G技術の大部分を受け継ぎ、10倍~100倍の性能向上をうたっています。5Gワイヤレスでは、サッカー場より少し広い程度の領域をカバーする小区画を構成する必要があります。特定の都市圏において複数の小区画が互いに重なり合い、メッシュネットワークを形成します。このネットワークでは、2つ(また時には3つ)の周波数が使用されます。低帯域(600MHz程度)では到達距離が長くなり、ミリ波の高帯域(38GHz程度)では短距離の非常に高速な接続が可能です。38GHz帯域は非常に大きな帯域幅を提供し、8~32個(以上)の個別アンテナを備えたMIMOアンテナアレイを使用します。5G MIMOアンテナはビームフォーミングとビームステアリングを利用し、フルデュプレックス通信を行います。各ビームは1つのユーザー機器(UE)に向かいます。大規模マシンタイプ通信(mMTC)は、5Gの動作についてもう1つの側面を表す言葉です。5Gは、低コスト、低消費電力、長寿命の多数の機器への接続を可能にし、エンベデッドハイウェイセンサー、パーキングセンサーや安全装置などのアプリケーションをサポートします。これは人々にとって真に「革命」と言えるかもしれません。

図1. 多数のアンテナ図1. 多数のアンテナ

IEEE (米国電気電子技術者協会)には、5Gの目標達成に向けて今後の開発の方向付けを行う5G担当の部門があります。その対象は、802.11axと802.11ay (WLAN)、802.15 (短距離技術)、802.22 (固定ワイヤレスブロードバンド)などです。

5Gによる高速化はどの程度か
しかし、5Gは10倍や100倍も高速になるのでしょうか。おそらく、良くて10倍程度でしょう。現在利用できる5Gスマートフォンは、Verizonが提供している中級電話機のMotorola Moto Z3、それに4月初めに発売された5G Moto Modのみです。Moto Modの方が200ドル高価で、5G受信用に4つのミリ波アンテナアレイモジュールを内蔵しています。theverge.comにはシカゴでこの電話機の性能を調査した結果が掲載されていますが、それによると、一部の場所で573Mbpsのダウンロード速度が得られています。アップロード速度は24Mbps程度でした。しかし、そのような高速接続はダウンタウンを移動中にはほとんど実現せず、Verizonが宣伝しているような利用はほぼ無理でした。これは4Gと比べて10倍の高速化です。しかし、同じシカゴでの調査では、pingテストで4Gと変わらない20ms程度の遅延が観測されており、遅延を1ms前後まで短縮することは、5Gにとって実に一大事ということになります。

SamsungのGalaxy S10 5Gスマートフォンは、2019年5月16日に出荷開始とされています。その性能がどの程度か、拝見するとしましょう。この電話機は、どうやら600MHz帯域と28GHzおよび39GHz帯域を使用するようです。Verizonは、この1,300ドルの電話機について予約注文の受付を開始しています。

300万カ所以上の4G基地局を擁する中国の3大モバイルオペレータは、世界の4G全体の中で最も大きなシェアを占めています。米国では、大人の90%以上、子供の50%以上が携帯電話を持っています。2017年には、米国のモバイルワイヤレス基地局は32万3,448カ所でした。世界全体の携帯電話ユーザー数は、50億人以上とされています。そして、その数は今後も増加する見込みです。それほど多くの携帯電話が使用されている今日、基地局は至るところに設置され、日々増加しています。

5Gをめぐる健康上の懸念は正当か
連邦通信委員会(FCC)は(基地局の高さに応じて)最大500W/チャネルまでの実効放射電力(ERP)を認めていますが、都市部および郊外地区にある基地局の大部分は、100W/チャネル以下のERPで動作しています。基地局は通常、3方面に通信を行い、3つのトランスミッタを備えています。しかし、現在の標準的なLTE基地局は各セクターに2 x 2個のMIMOと2つのキャリア(20MHz周波数帯域)を持ち、合計12のTRXチェーンを構成しています。エネルギー使用量は250W~500W/TRXチェーンです。

このセルラー信号は非電離放射線であるとはいえ、公衆と環境を保護するため、5Gを展開する前に人の健康に及ぼす影響について調査する必要があると、科学者たちは警告しています。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が推奨する放射電力限度は、(試案では)全身に対して0.08W/Kg-1に引き下げられています。

EMFとは
ICNIRPのガイドラインにあるこのEMFについての(かなり長い)技術的説明は、なかなかのものです。そこでは次のように事実が述べられ、高周波の相互作用の複雑さが示されています。

「高周波のEMFは、高速で振動する電磁場で構成されている…この電磁場は発生源から伝播する際に電力を伝送する。電力の単位はワット(W)で、これはジュール(J、エネルギーの単位)/秒に等しい。高周波のEMFが生体に到達すると、その電力の一部は生体から反射され、その他は生体内に伝播する。その結果、生体内では複雑なパターンの電磁場が生じるが、これはEMFの発生源や周波数のほか、生体の物理的性質や寸法によっても大きく変わる。この…誘導電場は…生体にさまざまな形で影響を及ぼす可能性があり、それが健康に関係することもあり得る。

第1に、生体内の誘導電場は、極性分子(主に水分子)と自由に運動する荷電粒子(電子やイオンなど)の両方に力を及ぼす。どちらの場合も、EMFのエネルギーは運動エネルギーに変換され、極性分子の回転や荷電粒子の運動(電流)を引き起こす。極性分子が回転し、荷電粒子が運動すると、それらは通常、他の極性分子や荷電粒子と相互作用し、運動エネルギーは熱に変換される。この熱は、さまざまな形で健康に影響を及ぼす可能性がある。第2に、誘導電場が十分に強力で短時間であれば、神経に刺激を与えるか、または直流(DC)の電気穿孔法の際に生じるのと同様な生体膜の誘電破壊を引き起こすのに十分な電気力を及ぼす可能性がある(Mir、2008)」。

図2. 5Gセルとその他の混成設備図2. 5Gセルとその他の混成設備

至るところに存在する高周波源
私たちの周囲には多数の高周波源があります。ラジオやテレビのように、1900年頃から存在するものもあります。これらの高周波源の近くで生活する人々に健康上の問題が多発しているという話は聞きません。たとえば、空港のボディスキャナーではミリ波が使用されています。FMラジオ局のERPは通常、5KW~40KWです。

レーダーは、4GHz~40GHzの周波数帯域の高周波エネルギーの一般的な発信源です。電力レベルが50KW~1MW以上であることはよくありますが、低デューティサイクルのパルスとしては使用されています。1%のデューティサイクルでも1KWの平均電力が生み出され、航空機内や空港、その他いくつかのタイプの施設では、人々が多年にわたりその周辺で働いています。自家用ボートにはXバンド(10GHz)やSバンド(3GHz)のレーダーが搭載されており、乗船者の頭上で回転しながら1KW以上で送信します。

図3. 旧式の携帯電話図3. 旧式の携帯電話

スマート/ワイヤレス電気メーターが初めて導入された当時、私が住む地域では、一部の住宅所有者たちの激しい反発がありました。高周波が害を及ぼすのではないかと懸念したのです(また、従来の手動式メーターを使い続ける選択肢がなかったためでもあります)。スマートメーターが発する高周波は、頭痛、消化不良、物忘れを引き起こし、各種のがんの罹患率を高めると言われていました。

私は当時、これらの「スマート」メーターを調べました。私の地域で電力会社が使用するPG&Eのスマートメーターでは、アンテナに送られる電力は1W未満です。このスマートメーターは、近くの集約ポイントにデータを定期的に中継し、毎回の高周波送信の継続時間は2~20ミリ秒です。これらの間欠的な信号は、合計で1日当たり約45秒間になります。このレベルの高周波で体調を崩す人がいるとして、街のコーヒーショップにでも立ち寄った場合、何が起こるでしょうか。その店のWi-Fiルーターに6台のノートPCが接続し、5人の客が携帯電話を使用していた場合、その人はひどい体調不良に見舞われるでしょう。とはいえ、スマートメーターは一部の人を不健康にしました。

さらに、携帯電話は1998年頃以降、大量に使用されています。図4を見ると、その使用者数に対応してがん性脳腫瘍が増加した形跡はないことがわかります。別のデータでは、米国におけるがん性脳腫瘍の罹患率は2016年まで横ばいであったことが示されています。

ただし、最近公表されたデータは、イングランドでがん性脳腫瘍の罹患率が大幅に増加したことを示しています。1996~2015年の期間に、実に2倍以上の増加です。このデータによると、すべての脳腫瘍の罹患率はほぼ横ばいですが、がん性腫瘍の罹患率は上昇しています(一方、がん性以外の腫瘍の罹患率は低下)。さまざまな原因が考えられるとはいえ、注視する必要はあります。

図4図4. (A) 米国における携帯電話の契約者数(1984~2006年)。
(B) がん性脳腫瘍の年齢調整発生率(1984~2006年)。出典:アメリカ国立医学図書館

いくつかの疫学研究では、携帯電話を10年以上にわたり多用している人について頭蓋骨内の腫瘍発生率の上昇が報告されています。特に懸念されるのは、聴神経腫瘍と呼ばれる良性のシュワン細胞腫です。この腫瘍は、内耳と脳内の組織をつなぐ神経細胞に影響を与えます。この腫瘍が成長すると、悪性がんへと進行する場合もあります。しかし、他の研究では、携帯電話を多用するユーザーに聴神経腫瘍や脳腫瘍が増加したという証拠は見つかっていません。

インドにおける2つの研究のデータでは、携帯電話基地局の近くで生活する人について、小核、抗酸化物質レベル低下、および血中リンパ球のDNA損傷の発生率上昇が示されています(Zothansiama 2017、Electromagnetic Biology and Medicine)。

高周波曝露の健康影響に関する研究
米国国立衛生研究所の国家毒性プログラムでは、セルラー変調高周波にさらされたラットとマウスに関する2つの重要な研究(TR-595、TR596)を行っています。2年間にわたる研究では、240匹のラットが全身を携帯電話のGSMまたはCDMA変調900MHz RFR (高周波放射)にさらされました。0 (陰性対照)、1.5、3.0、6.0W/kgの電力レベルで、約18時間/日、毎日、50%のオン/オフサイクルという条件で実施されました。メスでは、妊娠の有無、母体生存率、子を産んだ個体の割合に対する曝露関連の影響はありませんでした。ただし、平均体重は6W/kgのグループにおいて、大半の時点で陰性対照群を大幅に下回りました。

この2年間にわたる研究の最後に行われた評価では、6W/kgのオスのグループで心臓の悪性シュワン細胞腫が大幅に増加したことが示されました。0、1.5、3、6W/kgの高周波レベルにおいて、この腫瘍が0/180、1/180、0/180、5/180例発生しました。5/180は2.8%です。

この研究の知見には、いくつかの興味深い矛盾がありました。たとえば、「副腎髄質:良性、悪性、または複合の褐色細胞腫」については、発生率は11/88、24/90、28/89、14/87であり、したがって最大曝露時の発生率がより低レベルの曝露時の2例を下回りました。こうした現象は複数の分野で発生しています。また、この研究では、GSMではなくCDMA変調グループでのみ、オスの海馬にいくらかの「DNA損傷」が見られました。メスにはこのような悪影響はまったく見られませんでした。これらのDNA分析については、高周波のレベルが示されていません。もう1つの興味深いデータの特長は、RFR曝露が最大のグループで生存率が大幅に上昇していることです(25/90、45/90、50/90、60/90)。

ラマツィーニ研究所(イタリア、ボローニャ)では、1日19時間、1.8GHz GSM変調の0、5、25、50V/mの超高周波電磁場にさらされたラットに関する研究が行われましたが、この研究は多大な注目を集めています。この研究では、全身の比吸収率(SAR)を、5V/mで0.001W/kg、25V/mで0.03W/kg、50V/mで0.1W/kgと評価しました。これらのレベルは、いずれも米国の基地局の基準以下です。この研究では、最大の曝露レベルでオスに心臓のシュワン細胞腫の発生が見られました(上記の国立衛生研究所の研究に酷似)。この研究はいくらか論争の的になっています。データをめぐっていくつかの疑惑がある上、すべてのラットがある奇妙な理由で生後間もなく1回だけ低線量のガンマ線放射を受けたとみられるためです。

世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)でも、高周波放射線曝露の潜在的な健康影響に関する研究が行われています。WHOは、高周波放射線をグループ2B (ヒトに対して発がん性を示す可能性がある)に分類しています。参考までに挙げれば、コーヒーもグループ2Bに入っています。「発がん性を示す可能性」とは、健康問題の可能性について監視する必要があるということであり、実のところそうすべきです。

高周波放射線の潜在的な健康影響に取り組んでいる機関としては、以下が挙げられます。

  • 労働安全衛生局(OSHA)
  • 連邦通信委員会(FCC)
  • 世界保健機関/国際がん研究機関(WHO/IARC)
  • 疾病管理予防センター(CDC)

すべてのエレクトロニクス技術者は、自分が開発している製品の安全性に関わる問題を認識すべきです。私たちは何ら権限を持っておらず、物事を規制することはできません(また、そうしたいとも思いません)が、問い合わせがあればそれに対応して、関係のある有益な事実をいくらか説明できる程度の認識は持っておくべきです。これは、セルラー通信の安全性、必要性、および実用性についても当てはまります。これは容易に取り扱える問題ではなく、注意を要する分野であることも確かです。結局のところ、5Gを声高に擁護するグループもいれば、そんなものは信頼できない、そんなものはいらないと言うグループもいるわけです。