セラミックパッケージの電圧リファレンスはどのように長期ドリフト性能を向上させるのか

2019年4月9日

Andrew Escamilla 筆者:Andrew Escamilla
 インダストリアルコミュニケーション事業部門アソシエートビジネスマネージャ、マキシム・インテグレーテッド 


電圧リファレンスは、電圧を測定する電子システムからの測定値が正確であることを保証する上で重要な役割を果たします。測定システムでは、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)が入力電圧をリファレンス電圧と比較します。次にADCは、入力信号とそのリファレンス電圧の間の関係を表すコードを生成します。リファレンス電圧に誤差があると、結果として測定データに誤差が生じます。

特定の機能にとって最適な電圧リファレンスを選択するには、以下のような最重要の精度仕様を検討する必要があります。

  • 初期精度:室温での精度
  • 温度係数:温度の関数としての出力電圧の変化

これらのパラメータを念頭に置いて、どのように選択すればよいでしょう?温度に対する総精度が±0.2%の電圧リファレンスが必要だとします。この場合、初期精度が±0.1%で温度係数が±10ppm/℃のリファレンスを使うことができます。25℃~125℃の範囲で、温度係数による変化は10ppm/℃ × 100℃、または1000ppm (0.1%)になる可能性があります。その結果、合計誤差(初期 + ドリフト)は±0.2%以内になると予想されます。

合計誤差をもっと良くしたい場合もあるでしょう。その場合は、ずっと小さい初期誤差および/または温度係数の値を備えた、より高精度の電圧リファレンスを選択することができます。一般に、より高度な設計および較正技法によって仕様を改善することができます。

精度が向上すると、それ以外の誤差原因がより目立ってきます。長期ドリフト(LTD)はそれらの誤差原因の1つで、より高性能なシステムで特に重要になります。LTDは、起動時の所定の電圧リファレンスからの出力電圧の変化によって示され、長時間にわたって選択された間隔で測定されます1。データシートには、一般的に1,000時間動作後の標準ドリフトが記載されています。LTDには多数の要因がありますが、主な要因の1つは回路ボード組立て時に発生するパッケージのストレスです。高温に晒されるとプラスチック製ICパッケージの形状にわずかな変化が生じ、それによって電圧リファレンスのチップに圧力がかかります。長時間の間に、組立てストレスは落ち着き電圧リファレンスの出力が変化します。どれだけの変化が生じるかは回路設計、レイアウト、およびパッケージなどの要素に基づいて決まり、多くの場合は数十ppm程度になります。

図1. 自動機械などの産業用機器では、高精度の電圧リファレンスが高性能に欠かせません。図1. 自動機械などの産業用機器では、高精度の電圧リファレンスが高性能に欠かせません。

図2は、標準的な電圧リファレンスのLTDを示しており、非常に高精度の測定システムの場合、長時間の間にLTDが精度に影響するほどの大きさになることは明らかです。システムの初期精度を向上させるには、組立て直後にシステム較正を行う方法があります。しかし、数週間あるいは数か月の間には、やはり変化が生じます。

図2. プラスチック製リファレンスのLTDのグラフ図2. プラスチック製リファレンスのLTDのグラフ

較正後のLTDを改善するために適用可能な各種の手法もあります。較正の前に、基板を数か月間バーンインすることができますが、この方法はあまり現実的ではありません。また、数時間かけて基板の温度サイクルを1回か2回実施する方法もあります。この方法は一般にストレスをより短時間で安定させるために役立ちます。

IC製造時の考慮事項もあります。たとえば、従来のプラスチックパッケージより安定したオプションを提供する電圧リファレンスチップ用パッケージタイプがあります。セラミックパッケージは優れたオプションで、プラスチックパッケージよりはるかに低いレベルの組立て後収縮を示します。その結果、LTDが大幅に向上します。初期のセラミックパッケージは大きめになる傾向がありましたが、より小型になった今日のセラミックパッケージの3mm × 3mmというサイズは、小型部品を必要とする高密度回路基板の要件を満たします。

より優れたパッケージタイプを使用すると、著しい利点が生まれます。図3で、電圧リファレンスIC は図2と同じものですが、新しいセラミックパッケージに実装されています。明らかに、LTDはセラミックパッケージの方が大幅に優れています。

図3. セラミック製リファレンスのLTDのグラフ図3. セラミック製リファレンスのLTDのグラフ

高精度産業/プロセス制御、高精度計測、および高分解能ADC/デジタル-アナログコンバータ(DAC)などのアプリケーションの場合、MAX6079のような低ノイズ、低ドリフトの電圧リファレンスは優れたオプションを提供します。MAX6079は小型、8ピンハーメチックセラミックパッケージで提供され、時間、温度、および湿度に対する低ドリフトを提供します。携帯電話、産業プロセス制御システム、およびポータブル、バッテリ動作機器などのアプリケーションにとって使用する価値のあるオプションが、セラミックパッケージのシャント電圧リファレンスのMAX6279です。MAX6279は高精度、2端子シャントモード、バンドギャップ電圧リファレンスで、1.225Vの固定逆方向ブレークダウン電圧で提供され、時間、湿度、および温度に対する安定した結果を提供します。

まとめると、高性能の測定システムには、高精度で安定した電圧リファレンスが必要不可欠です。小型実装面積でシステム性能を向上させるにはLTD性能を強化する必要があり、これは小型セラミックパッケージの電圧リファレンスを実装することによって可能になります。

このブログと同様の記事が2019年2月11日にEmbedded Computing Designに掲載されました。

参考文献
1 https://www.edn.com/design/analog/4460470/1/Factors-affecting-reference-long-term-drift-performance