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小型ショットキーダイオードが同期整流コンバータのノイズをどのように最小化するか

2020年5月21日

Ray Crampton  筆者:Ray Crampton
 ゲストブロガー、Ray Crampton Consulting 


すべてのスイッチング電源の設計者は、ノイズを重視した設計の必要性、およびそれと効率、基板スペース、コスト、および開発時間とのトレードオフの厳しさを痛切に感じるようになります。同期整流コンバータで使用されるMOSFETのボディダイオードは、無料でついてくる素晴らしいおまけで、デッドタイム転流時の導通経路を提供してくれます。もう1つ無料でついてくるのが、それによって生成されるノイズで、これは「無料」でも増えて欲しくないものです。そのとき何が起きているかを調べ、小型のショットキーダイオードがノイズの最小化にどのように役立つかを探求し、この技法がどのような場合にどのように有効かについての理解を深めましょう。

図1. 従来のバックレギュレータトポロジの図図1. 従来のバックレギュレータトポロジの図

図2. バックコントローラのスイッチングサイクルの説明図図2. バックコントローラのスイッチングサイクルの説明図

標準的なバックコンバータのトポロジを図1に示します。動作についての詳細なDC-DCバックコンバータのチュートリアルが利用可能で、スイッチングサイクルの表示を図2に示します。スイッチがオフになるたびにデッドタイムが挿入され、第1のスイッチが完全にオフになってからもう一方のスイッチがオンになることを確保します。このデッドタイムの間、電流はインダクタを通って流れ続ける必要があり、この電流経路はMOSFET Q2に組み込まれた、いわゆるボディダイオードによって提供されます。この短い時間の間に(特にQ1がオンになるときに)多くのことが起こり、そこで追加のノイズが発生します。

図3. ボディダイオードの逆回復電流曲線の図図3. ボディダイオードの逆回復電流曲線の図

図3は、Q2がオフになった直後からQ1がオンになった直後までを拡大しています。Q2がオフになるとき、その磁界の消滅によって電流はインダクタを通って流れ続けます。これによってインダクタ両端での電圧の転換(反転)が発生し、Q2のボディダイオードがオンになって導通するまでスイッチングノード(VSW)をローに引き下げます。デッドタイムが経過すると、Q1がオンになります。これによってQ2のボディダイオードに逆バイアスがかかります。ボディダイオードはPN接合ダイオード構造のため、逆回復時間という残念な特性があります。ボディダイオードが最初に逆バイアス状態になったとき、ダイオードを通って逆方向に電流が流れます。taで示される時間の間、PN接合内の電荷キャリアが一掃されます。次に、tbの時間の間、PN接合が逆バイアスに耐える空乏領域を形成するのにともなって、逆方向電流はゼロへと減少します。trrの間に発生する電流パルスによって寄生容量およびインダクタンスに電圧が誘導され、回路内のノイズに大きく寄与します。

複数の要因が逆回復曲線の特性に影響します。最大の要因は、ボディダイオードが本質的に長い逆回復時間を備えていることです。MOSFETは、ゲート電荷およびオン抵抗を低減するように最適化されています。MOSFETのボディダイオードは寄生PN構造で、パワーエレクトロニクスで使用される他のダイオードに比べて低速の逆回復を備えています。回復時間は温度にも依存するため、より高温下では大幅に悪化します。逆回復開始時のdIF/dtのレートは、主として回路の寄生インダクタンスによって制限されますが、設計者はこれを最小化しようとします。寄生インダクタンスが低いほどdIF/dtが高くなり、結果として|IR,MAX|が高くなります。これらの要素を改善するために我々ができることは(あるとしても)ごくわずかのため、追加のノイズを受け入れるか、工具箱からもっと良いダイオードを取り出すしかありません。

図4. 追加のショットキーダイオードD<sub>S</sub>を備えた従来のバックコンバータの図図4. 追加のショットキーダイオードDSを備えた従来のバックコンバータの図

工具箱の中のより良いダイオードとは、図4に示すように、MOSFETのボディダイオードと並列に配置されるショットキーダイオード(DS)です。ショットキーダイオードはより低い順方向電圧を備えているため、インダクタの反転時にボディダイオードの代わりにオンになります。Q1がオンになったあと、Q2に逆バイアスがかかるときに、ボディダイオードはすでにオフになっています(そもそも、最初からオンになっていません)。ショットキーダイオードはPN接合ではなく、金属半導体接合で作られているため、即座にオフになります。ショットキーダイオードには少量の接合容量があり、Q1から流れる電流によって充電される必要があります。これはボディダイオードの逆回復に似ていますが、大きさはより小さくなります。

以上から、ボディダイオードノイズの低減を検討する必要があるのはどのような場合か、適切なダイオードをどのように選ぶのか、物理的にどのように実装すべきかなどの質問が出てきます。理論の世界を離れ、現実の世界に飛び降りることにして、高精度の計算ではなく、一般的な指針という面で考えてみましょう。逆回復中に消費される電力に関与する要素からいくつかの知見が得られ、それらは次式によって与えられます。

PRR = QRR x VIN x fSW式(1)

ここで、PRRは電力(単位:W)、QRRはボディダイオードの逆回復電荷(単位:C)、fSWはスイッチング周波数(単位:Hz)です。QRRはMOSFETのデータシートに記載されていますが、通常は室温および特定のdIF/dtで規定されているため、実際の具体的な条件には一致しない可能性があります。たとえば、MOSFETが25℃を大きく超えることで、QRRは仕様上の値の2.5倍になる場合があります。それでも式1は、人生経験と同様に、ある程度の一般的な傾向を提供してくれます。ボディダイオードノイズは、以下の場合に最も高くなる傾向があります。

  • スイッチング周波数が300kHz~500kHz以上の場合
  • 入力電圧が高い場合
  • MOSFETの温度が高い場合
  • 数十MHz~数百MHzの範囲の周波数

ショットキーダイオードを選ぶときは、非常に短い時間(多くの場合は数十ns)のみ整流電流が流れ、したがって熱的負荷が軽いことに注意してください。比較的小さいダイオードで十分です。ショットキーダイオードの選択では、リードインダクタンスを可能な限り低くすることが優先されます。フラットリードを備えた小型表面実装パッケージが最適です。ダイオードは可能な限り物理的にMOSFETの近くに配置し、両者の間の寄生インダクタンスを最小限に抑えてください。実際、寄生インダクタンスが有害であることから、ショットキーダイオードを内蔵したMOSFETが提供されています。最後に、この記事では従来のバックコンバータトポロジを例として使用しましたが、これらの概念は他のタイプのスイッチングコンバータにも同様に当てはまります。

この記事が、MOSFETのボディダイオードによって発生するノイズと、その軽減にショットキーダイオードをどのように、なぜ使用することができるのかの理解に役立つことを願っています。このツールを工具箱に用意しておくと、将来難題を解決する役に立ってくれるでしょう。

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