卓越した探査機にもっと注目しよう

2018年12月18日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications 


日本の小惑星探査機はやぶさ2は、小型(幅900m)の小惑星リュウグウの詳細な調査を進めています。この非常に優れた宇宙船は、2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられ、2018年6月27日にリュウグウの周回軌道に到達しました。はやぶさ2と小惑星は、その時点で地球から約2億9000万km離れていました。はやぶさ2は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって出資、設計、および運用されています。

主契約事業者のNECは、609kg機体、Kaバンド通信システム、および中間赤外線カメラを製造しました。9月27日、はやぶさ2はイオンスラスターを使用して約55mの高度に降下しました。次に、2基のローバー(MINERVA-II1AとMINERVA-II1B)を射出しました。小惑星の重力は非常に小さいため、ローバーは舞い降りるように着地し、少し跳ね上がりました。ローバーは、それぞれ幅18cm、高さ7cmの大きさで、車輪ではなく跳躍機構を使って地表を移動します。ローバーの興味深い詳細については、こちらをご覧ください

図1. 小惑星リュウグウは、直径約900mのほぼ球形/菱形で、黒っぽい(低反射率の)表面をしています。自転周期は7.5時間です。(画像著作権:JAXA、東京大学、高知大学、立教大学、名古屋大学、千葉工業大学、明治大学、会津大学、および産総研)

図1. 小惑星リュウグウは、直径約900mのほぼ球形/菱形で、黒っぽい(低反射率の)表面をしています。自転周期は7.5時間です。(画像著作権:JAXA、東京大学、高知大学、立教大学、名古屋大学、千葉工業大学、明治大学、会津大学、および産総研)

不可能とも思える作業
ミッションサイエンティストたちは、探査機本体の着陸可能地点の絞り込みを進めていました。彼らは10月24日にサンプル採取のリハーサルを実施しました。探査機は小惑星の表面から12m (!!)の高度まで降下し、着陸候補地に小型のターゲットマーカーを投下しました。

10月3日、はやぶさ2は通常の滞空域であるリュウグウ上空19kmから降下し、小惑星から約52mの位置でMobile Asteroid Surface Scout (MASCOT)を投下しました。幅30cm以下、重さわずか10kgのこの小さい箱形のローバーは、20分かけてリュウグウの地表に到達し、激しく弾んで着地したあと、ぎこちない、横倒しの形で停止しました。しかし、モーター駆動のスイングアームを使って、正しい高さを確保しました。

このローバーは、広角カメラ、磁力計、ハイパワー放射計、および赤外分光計のすべてを使って測定を行いました。次に、アームを使って自分自身を上方に押し飛ばし、岩石の多い地表を数メートル跳躍して、着地後にまた一連の測定を実施しました。MASCOTローバーはバッテリ駆動で、小惑星時間でおよそ3日(または16時間)分のエネルギーのみを搭載しています。それを17時間まで持続させて、収集したデータを上空の母船に送信しました。

1月中に、探査機は衝突装置(インパクタ)を切り離し、衝突装置は10mmの弾丸(プロジェクタイル、質量5g)を地表に撃ち込む予定です。これによって小型のクレーターが形成されます。約2週間後、はやぶさ2はそこに華麗な軟着陸を試み、アームを展開してクレーター内部から「土」のサンプル(美しい、本来の汚れていない状態の小惑星内部のサンプル)を採取します。そのサンプルをしっかりと握りしめ、2019年末に小惑星を離れて地球への帰路に就きます。2020年末にオーストラリアに着陸する予定です。

図2. はやぶさ2のONC-T (Optical Navigation Camera-Telescopic:光学航法望遠カメラ)で10月15日に42mの距離から撮影された小惑星リュウグウの画像。解像度はピクセル当り約4.6mmで、これまで宇宙船によって撮影された小惑星の画像の中で最も高解像度です。(画像著作権:JAXA、東京大学、高知大学、立教大学、名古屋大学、千葉工業大学、明治大学、会津大学、および産総研)

図2. はやぶさ2のONC-T (Optical Navigation Camera-Telescopic:光学航法望遠カメラ)で10月15日に42mの距離から撮影された小惑星リュウグウの画像。解像度はピクセル当り約4.6mmで、これまで宇宙船によって撮影された小惑星の画像の中で最も高解像度です。(画像著作権:JAXA、東京大学、高知大学、立教大学、名古屋大学、千葉工業大学、明治大学、会津大学、および産総研)

リュウグウは間もなく太陽の裏側を通過するため、はやぶさ2は約2か月にわたって地球との連絡を絶たれることになり、その後また素晴らしい作業が再開されます。

時を同じくして、もう1つの小惑星探査機であるNASAのOSIRIS-RExミッションが、2年がかりで小惑星ベンヌに到達しました。ベンヌは潜在的に危険な小惑星と考えられており、わずかながら22世紀末に地球に衝突する可能性があります。興味深いことに、この小惑星はリュウグウと同じ菱形をしています。はやぶさ2と同様、OSIRIS-Rexもサンプルを採取して地球に持ち帰る予定です。

はやぶさ2の詳細
はやぶさ2の電力は、2つの太陽電池パネルによって生成され、出力は太陽から1AUの距離で2.6kW、1.4AUで1.4kWです。電力は11個の13.2Ahリチウムイオンバッテリに蓄積されます。この探査機が使用しているイオンスラスターは、キセノンガスをプラズマ(イオン)に変換するもので、高電圧を印加することによって加速します。放電室内の0.15Tの磁束密度はSmCo磁石によって提供され、マイクロ波は商用の進行波管アンプ(TWTA)によって4.25GHzで生成されます。

図3. この探査機はすでにいくつかの不可能と思えるような作業を行っています。(画像著作権:池下章裕)

プラスに帯電したイオンはイオンビームとしてスラスターから噴射され、それが推力を生み出します。中和器は同数の電子を放出して噴射ビームの総電荷を中性にし、マイナス電荷の蓄積を防止します。はやぶさ2には4つのスラスターがあります。3つのみが同時に動作し、最大28mNの推力を提供します。イオンエンジンシステムの整備重量は155kgです。生成される推力は小さいものの、ロケット(化学)推進で必要となる推進剤より大幅に少ない、わずかな量の推進剤で推力を生成します。イオンスラスターは、現在100以上の対地同期軌道通信衛星を適切な位置に維持するために使用されています。

太陽系の起源
科学者たちは、この小惑星の科学的性質を詳しく調べることで太陽系の起源についての知見が得られることを期待していますが、他にも水、有機物、貴金属などの興味深い物質が多く含まれています。そして、もちろん、それらの貴金属を採掘しようとしている人もいます。

はやぶさ2のような素晴らしいエンジニアリングの業績は、私たちエンジニア全員から賞賛されるべきであり、テレビの全国放送を含むすべてのニュースメディアに取り上げられるべきです。間違いなく、彼らが扱っている題材にはすぐに入れ替えてかまわないようなものがあります。これらの業績は、一般大衆(と政治家と子供たち)がエンジニアリングの偉業に興奮を覚えることにつながります。そしてこの偉業は、チップメーカーによるIC設計を含む、電子設計工学の成果です。また、優れた機械工学が活用されている部分もあるでしょう。機会があるたびに、これらのテクノロジーの偉業について声を大にして語ろうではありませんか。