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ウェアラブルは人々を診察ベッドから解放することができるか?

2019年7月16日

Andrew Baker  筆者: Andrew Baker
 インダストリアル&ヘルスケア事業部門マネージングディレクター、マキシム・インテグレーテッド 


世界中で、ヘルスケアの支出は2022年の10兆ドルに向かって確実に増加しており、巨大な経済的影響を与えています。技術系企業のヘルスケアチームに属する者として、マキシムの同僚と私は常にこのコストを軽減する方法を考えています。その多くは、ウェルネスプログラムを進化させ、人々を診察ベッドから解放することによって始まります。ここで役に立つのがウェアラブルです。

ウェアラブル機器は、心拍数(心拍変動を含む)、血中酸素レベル、体温、ストレスレベル、睡眠パターンなど、各種のバイタルの継続的な、リアルタイムの監視を実現します。衣料、チェストストラップ、腕時計、イヤホン、宝飾品などを始めとして、さまざまな形状のウェアラブルが近年登場しています。これらの形状の中に、ユーザーのための機能が、それを使用するための便利な方法とともに組み込まれています。

より良いヘルスおよびフィットネスの成果に貢献するウェアラブルの大量採用を促進するには、どうすれば良いでしょうか?

これは、今年前半にフィンランドのヘルシンキで開催されたFirstbeat HRV Summitの討論会で私が議論した問題の1つでした。このサミットには世界中から専門家が集結し、心拍変動の測定値から得られる知見をどのように民生用技術、高度なスポーツ、およびウェルネスプログラムなどの領域に適用することができるかを検討しました。討論会には、私の他にフィットネスブロガー、市場調査専門家、およびランニングコーチが参加し、ウェアラブル分野の将来の動向について議論しました。

CEO Joni Kettunenに語りかけるAndrew BakerカンファレンスでFirstbeat社CEOのJoni Kettunen氏と話をする筆者のAndrew Baker (左)。(写真提供:FirstbeatおよびAkifoto)

ウェアラブルの大量採用を促進する

マキシムは、新しい使用法および世界的またはマクロ経済的な大問題を解決する方法を非常に重視しています。ヘルスケアのコストが増大のスパイラルを続ける中で、ウェアラブルが1つの答になる可能性があります。これらの機器から得られる知見は、人々が予防的なケア行為により率先して取り組み、慢性疾患の状態をより厳密に管理し、危険な信号が検出されたときに対策を取るための動機付けとなります。Juniper Research社の調査によると、ヘルスケアウェアラブル市場は2023年には600億ドルに達する可能性があり、同じ年には500万人がヘルスケアプロバイダによるリモート監視を受けていると予想されます。売上げは好調になると思われますが、人々が実際に機器を習慣的に装着しなければ、これらの数字によってヘルスおよびフィットネスの成果が変わることはありません。

ウェアラブルの大量採用を引き起こす魔法の呪文はないかも知れませんが、習慣的な使用を促進するために、機器は以下の要件を満たす必要があります。

  • 使用が受動的かつ透過的であること。測定および監視が自動的に、バックグラウンドで行われる必要があります。たとえば、ユーザーが指で機器にタッチして測定を行う必要がある場合、ユーザーがあまり長期間測定を続けない可能性が高くなります。
  • 装着が快適かつ便利であること。現在利用可能な形状の多くは、これに対応しています。重要なのは、それらの機器の精度(と言うより、内部の生体センサーの精度)を確保することです。たとえば、手首の血管は人体の他の部位(たとえば指)より深い位置にあり、通常は灌流が少ないため、手首からバイタルサインを高精度で測定するのは容易ではありません。また、設計者は肌の色や動きなどのパラメータも計算に入れる必要があります。これに対して、耳の動脈ははるかに皮膚表面に近い位置にあり、手首に比べて信号対ノイズ比が良いため、イヤホンを介したインイヤー血液バイタルサイン監視はより高レベルの精度を提供することができます。
  • 低電力であること。頻繁な充電や不都合なタイミングでの電池切れを喜ぶ人はいません。
  • データが安全であること。ユーザーは、機器によって収集されるすべての個人データが、決して悪人の手に渡ることがないと信頼できる必要があります。
  • 小型かつ低価格であること。機器が目立たないものであるほど、人々が日常生活に取り入れやすくなります。また、購入しやすさが重要であることは明らかです。

筆者のAndrew BakerはFirstbeat HRV Summitでパネルディスカッションに参加しました。筆者のAndrew BakerはFirstbeat HRV Summitでパネルディスカッションに参加しました。(写真提供:FirstbeatおよびAkifoto)

個別化されたヘルスケアの実現

討論会で仲間達の1人が指摘したように、新しい、あるいは開発中のさまざまな機能の中には、正式な医療的立場からの承認を得られそうにないものもあります。これは、立場によっては、それらの機能の有効性が否定されるわけではないという彼の主張に私も賛成です。革新の促進を続け、これらの機器の精度を追求することが重要です。

将来的に、ウェアラブルはより個別化されたヘルスケアに貢献し、特定の形状がより多くの使用法に対応するように進化すると思われます。たとえば、糖尿病の血糖値を測定するパッチに心拍変動監視とパルス酸素濃度測定を追加するのはどうでしょう?あるいは、補聴器で心拍数と血中酸素レベルを測定するのはどうでしょう?患者はすでに特定の用途の機器を使用しているわけですから、その人のニーズに基づいて他の用途を組み込むのは実用的です。ますます、人々は非侵襲的なものを求めています。血液は全体的な健康状態を見るための優れた窓ですが、非侵襲的に測定するのは容易ではありません。そのため、マキシムのようなハードウェア企業は、革新を推進し、たとえば現在は病院での処置が必要なことを成し遂げるツールを作成するという課題に取り組んでいます。もう1つの刺激的な展望として5Gの登場があり、スマートフォンにテザリングされていないウェアラブルからのリモート監視が可能になります。

Firstbeat HRV Summitは、ヘルスケアウェアラブル分野の最も優秀な人々とアイデアを共有するための素晴らしい機会を与えてくれました。確かに、すでに利用可能な技術と将来登場する技術によって、ヘルスケアの成果が実現される見通しは明るいと言えます。

さらに詳しく

ウェアラブルヘルスケアの設計上の課題への対応に役立つアプリケーションノート、チュートリアル、およびセンサーソリューションをご覧ください。