2019年11月25日
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筆者: Christine Young ブロガー、マキシム・インテグレーテッド |
スマートメーターから機械や自動車まで、スーパーキャパシタは多様なアプリケーションで急増しています。それらはバッテリに取って代わるでしょうか?おそらく今すぐすべてのアプリケーションで代替することはないでしょうが、特定の設計ではスーパーキャパシタはバッテリよりも優れた特長を提供します。
マキシムのコア製品グループ製品定義ディレクターであるV.A. Krishnanは、最近のウェブセミナー「Simplifying Supercapacitor Backup Applications Using MAX38888 (MAX38888を使用してスーパーキャパシタバックアップアプリケーションを簡素化する)」でスーパーキャパシタの概要を提示し、どんな場合に使用すると利点が得られるかを説明しています。
ところで、スーパーキャパシタとは何でしょうか?スーパーキャパシタは高容量のコンデンサで、電解コンデンサと充電式バッテリの間を埋めるデバイスです。誘電体はありません。Krishnanが説明しているように、固体電極と液体電解質が電気二重層を形成し、セパレータが短絡を防ぐという構造です。通常のコンデンサの2倍の接合部が得られます。コンデンサの動作はイオンの物理的な動きによって形成されます。Krishnanによると、バッテリと違って化学反応がないため、スーパーキャパシタは優れた充放電ライフサイクルを備えます。また、電極内の細孔によって電極の有効表面積が増大するため、スーパーキャパシタは非常に高容量です。
次にKrishnanは、バックアップアプリケーションでのスーパーキャパシタの利点と欠点について概説しています。利点には以下があります。
- 高容量のため従来のバッテリより長いバックアップ時間
- 優れた充放電ライフサイクルによって潜在的にバッテリより長寿命
- 出荷および取り扱いがバッテリより容易(特にリチウムイオンタイプと比較して)
- 複雑な有線アプリケーションでの分散バックアップに対応
考慮すべき欠点には以下があります。
- スーパーキャパシタ1つ当りの最大定格電圧は3Vに制限されるため、12V以上では高コストのバックアップ
- バッテリより高コスト
- 低温での等価直列抵抗(ESR)は室温でのESRの3~4倍
- 現在の技術では高温での一般的な動作が不可能(高温では寿命が短縮)
これらすべてに基づいて、バックアップアプリケーション用にスーパーキャパシタがバッテリより優れた選択肢となるのはどんな場合でしょう? Krishnanによると、その答えは以下の質問に対する回答の中にあります。
- 電源が100ms以上にわたって消失しても大丈夫か? USBなどの限定的な電源があるか?
- 主なシステム電圧は12V以下か?
- バックアップ時間は120秒以内か?
- 周囲温度は105℃以下か?
これらの質問のいずれかに対する答えがイエスなら、従来のバッテリよりスーパーキャパシタを検討する価値があります。スーパーキャパシタのコストは時間とともに低下し続けます。スーパーキャパシタを使うと、「巨大なバッテリで電源レールをバックアップし、システム全体を動作させ続ける代わりに、複雑な有線システムの中でバックアップする必要があるノードのみをバックアップすることができます」とKrishnanは述べています。
スーパーキャパシタの利点を生かせるアプリケーション
バックアップ時の電力要件は進化してきました。システムのスマート化に伴って、より多くの機能が必要になります。これによって、必要な容量が増大しています。たとえば、バスやタクシーの監視装置(ブラックボックスなど)では、バックアップ時にSDカードへのデータ保存が要求される場合があります。防火アクチュエータなどのより複雑なアプリケーションでは、主電源喪失時にデータ保存とともに通信や他のコア機能が要求される可能性もあります。
バックアップ時の負荷電流プロファイルは一定ではありません。全システムが動作するピーク電力時によって、電力伝送のサイズが決まります。総負荷プロファイルとバックアップ時に供給されるエネルギーによって、スーパーキャパシタのサイズが決まります。そしてスーパーキャパシタのサイズとバックアップの頻度によって、充電回路のサイズが決まるとKrishnanは説明しています。
ウェブセミナーの中で、Krishnanはスーパーキャパシタが役立ついくつかのアプリケーションを示しています。ポータブルバーコードスキャナは良い例です。通常、これらのスキャナはリチウムイオンバッテリによって給電され、ほとんどの時間は充電クレードルに置かれています。Krishnanは、必要な電力をスーパーキャパシタで供給可能なため、この場合バッテリは実際には不要だと説明しています。「それによる最大の利点は、出荷と取り扱いのコストが大幅に低減することです。バッテリは…システムコストを増大させる可能性があります。スーパーキャパシタの方がはるかに寛容で、トリクル充電なども必要ありません」と彼は述べています。
図1. ポータブルバーコードスキャナは、スーパーキャパシタでバックアップ電源用バッテリを代替可能なアプリケーションの例です。
スーパーキャパシタバックアップアプリケーションの開発を簡素化するために、MAX38888などの反転可能バック/ブーストレギュレータが役立ちます。MAX38888は0.8V~4.5Vのコンデンサ電圧範囲をバックアップします。バッテリ切り離し時のパワーダウンは不要で、バックアップ電源はバックおよびブーストモードで動作します。図2は、バス/タクシー監視アプリケーションでMAX38888を使用しない例および使用する例を示しています。ご覧のように、MAX38888を使用すると1つのバックコンバータおよびリニアチャージャが不要になります。
既存のバス/タクシー監視アプリケーション
MAX38888を使用するバス/タクシー監視アプリケーション
図2. MAX38888は2%の安定化精度を備えた双方向システムのため、このバス/タクシー監視システムを反転可能バック/ブーストレギュレータのMAX38888を使って再設計する場合、バックコンバータおよびリニア充電は不要です。
Krishnanは次のように述べています。「マキシムのソリューションは、バックアップアプリケーション用の最も簡素で最適化されたソリューションを提供します」。
Krishnanのオンデマンドウェブセミナー「Simplifying Supercapacitor Backup Applications Using MAX38888 (MAX38888を使用してスーパーキャパシタバックアップアプリケーションを簡素化する)」で、特定のバックアップアプリケーションでのスーパーキャパシタの利点についての詳細をご覧ください。