バッテリ残量ゲージを使ってユーザーの信頼を築く方法

2018年2月20日

Bakul Damle 筆者:Bakul Damle
バッテリマネージメント担当ディレクター、マキシム・インテグレーテッド


スマートフォンのメーカーが、経年劣化したバッテリに対応するために旧型モデルの動作速度を落としているというニュースをお聞きになったと思います。目的は、バッテリが古くなったスマートフォンが突然シャットダウンするのを防ぐことです。

その目的は立派ですが、ユーザーは詳細なバッテリ情報にアクセスできず、古いバッテリの管理方法の変更について明確な説明がなかったことが主な原因で、やはりこのニュースはユーザーの激しい反発を招きました。この出来事は、高信頼性のバッテリ情報をユーザーに提供することの重要性を明確に示しています。

経年劣化したバッテリを管理するための簡単な方法

現在使用されているほとんどのモバイル機器はリチウムイオンバッテリを使用していますが、これは時間とともに劣化します。容量が減少し、内部インピーダンスが増大します。古くなったバッテリを重い負荷で使用すると、軽負荷に比べて取り出せる容量が少なくなります。これは、古いバッテリの方が新しいバッテリよりインピーダンスが高いためです。

バッテリ動作の設計に残量ゲージICを内蔵すると、経年劣化したバッテリを比較的容易に管理するための方法が提供されます。多くの残量ゲージが提供する充電状態(SOC)データの他に、マキシムのModelGauge m5 ICなどの最新の残量ゲージは以下のようなデータポイントも提供します。

  • 利用可能およびレポートされた残容量
  • 経年
  • タイマー
  • エンプティまでの時間
  • サイクル数
  • 経年予測
  • バッテリ抵抗値

どの情報を公開するかは、ユーザーの要望に基づいて決定することができます。これは、バッテリ動作の機器の管理を向上させ、バッテリ管理方式に対する信頼を築くために役立ちます。

これらの各パラメータについて、さらに詳細に見ていきましょう。

利用可能およびレポートされた残容量

ModelGauge m5のエンプティ補償機能は、理想的なバッテリ状態を前提とする理論上の残容量(RemCapMIX)とともに、負荷、温度、および経年を計算に入れた利用可能容量(RemCapAV)も推定します。利用可能容量は、負荷または温度が変化すると瞬時に変化します。しかし、その結果として、負荷または温度の変化に基づいて値が突然ジャンプする可能性があります。たとえば、充電器を接続していないのに、単に重負荷から軽負荷に変化したことによって利用可能容量が急に増えたら混乱するでしょう。この問題を軽減するために、レポート容量(RemCapREP)を使って残容量をユーザーインタフェースに伝えることができます。レポートされた容量は、利用可能容量とは違って瞬時に変化しません。負荷が変化すると、レポートされた容量の曲線は単にエンプティまでの時間が利用可能容量の曲線によって推定される値と同じになるように再設定されます。

バッテリ寿命
図1. 利用可能およびレポート残容量はバッテリ寿命の表示を機器ユーザーに提供します。

経年

残量ゲージの経年レジスタは、元の設計容量と比較した現在のフル容量の比率を%で示すものです。これは通常、バッテリが長時間使用されるにつれて減少します。

タイマー

タイマーは、ICが初めてセルに接続されてからの絶対時間という形で残量ゲージがバッテリの経年を追跡することを可能にします。一部のマキシム残量ゲージは、学習機能の一環として、チップ上の不揮発性メモリへのこの情報の定期的なバックアップも行います。その他のデバイスの場合は、ホストシステムがこの情報を定期的に保存し、電源喪失が発生した場合にそれをIC内に復元することができます。

エンプティまでの時間

現在の負荷、および仮定的な負荷または電力におけるエンプティまでの時間(TTE)も、有益なパラメータです。高負荷の機能を開始する前に、システムはその機能の動作にバッテリが対応できるかどうかを残量ゲージに問い合わせることができます。この尺度を使って、特にローバッテリ状態においてその高負荷の機能の開始を防ぐことによって、予期せぬクラッシュを防ぐことができます。あるいは、システムは事前にパワーマネージメント動作を実行して軽負荷の機能のみを許可するとともに、場合によっては、特定の高負荷の機能を有効にするにはバッテリが低下し過ぎていることをユーザーに伝えることができます。

サイクル数

サイクル数レジスタは、バッテリで発生した充放電サイクルの総数を管理します。自動車の走行距離計と同じように、端数および完全な回数を積算します。

Cycle+経年予測

Cycle+経年予測は、バッテリの寿命の間にユーザーがバッテリから取得可能なサイクル数を推定します。ModelGauge m5アルゴリズムは時間経過にわたってセル容量の変化を監視し、あらかじめ定義されたスレッショルドまでバッテリ容量が低下するのにかかったサイクル数を計算します。この予測を使って、タイミングの良いバッテリ交換の計画またはその他のバッテリマネージメント動作を行い、充電プロファイルを動的に変化させることによってバッテリの寿命を延長することができます。

バッテリ抵抗値

抵抗値レジスタは、バッテリの平均内部抵抗の計算値を格納します。このレジスタは、オープン回路電圧と、負荷時または充電時に長時間にわたって測定した電圧を比較することによってこれを達成します。この値はバッテリが長時間使用されるにつれて増大します。

動作時間と性能を向上させる

ユーザー体験をさらに強化するために、残量ゲージICはいくつかの事前予防的なバッテリマネージメント機能を提供することができます。たとえば、多くのマキシム残量ゲージはダイナミックバッテリパワーと呼ばれる機能を内蔵しています。これは、最適なCPU性能を可能とすることによって動作時間の延長を実現する機能です。この機能は、システムがクラッシュしないちょうど十分な速度にCPUを調整することによってこれを達成します。たとえば、多くのシングルセルバッテリアプリケーションでは、システムが適切に動作するために少なくとも3.3Vを必要とします。残量ゲージをダイナミックバッテリパワー用に設定することによって、システムの負荷を制御または制限してバッテリの能力の範囲内に留まらせ、バッテリが非常に低下した状態になるまで最小システム電圧を下回らないことを確保することができます。バッテリが非常に低下した時点で、システムは適切な手順でシャットダウンします。それによって、ユーザーは延長された動作時間を手に入れ、バッテリ低電圧状態によって発生する予期せぬクラッシュを防ぐことができます。ダイナミックバッテリパワーのような機能がない場合、基本的にシステム設計者に残されるのは、システムの性能を無条件に低下させ、その結果ユーザーの反発を招くリスクを負うという、好ましくないオプションのみになります。

一部のマキシム残量ゲージは、ピーク負荷を監視および制御してバッテリの損傷を防ぐ、設定可能な、高速電流コンパレータも備えています。これらのコンパレータはトリップ時にホストシステムに警告を送信し、ホストシステムは適切なパワーマネージメント動作を行ってピーク負荷/スパイクを抑制します。設定可能なスレッショルドを、予期せぬハードバッテリシャットダウンをトリガするバッテリプロテクタ制限より低い値に設定することができます。また、これらのコンパレータを使って、残量ゲージがホストシステムに提供するダイナミックパワーの推奨事項にシステムが準拠していることを確保することもできます。

バッテリ寿命
図2. MAX17055残量ゲージICでは、ダイナミックパワー機能が放電時の電力性能を推定します。

結局、ユーザーは明確なバッテリ情報と、動作時間とバッテリ寿命に関する潜在的な性能のトレードオフを期待しています。残量ゲージICを使うと、豊富な高信頼性バッテリ情報をユーザーに提供することができます。特に、マキシムの残量ゲージは動作時間を延長するとともにピークシステム性能も可能にする多様なツールを提供し、ユーザーの信頼を築くために役立ちます。