理想ダイオードはエンジニアの最良の友になりうる

2018年11月1日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications


理想ダイオードICは、人目を引かない子供に少し似ています。これらのデバイスは非常に大きい効果がありますが、エンジニアはこれらのデバイスのことを忘れがちです。理想ダイオードICは単にMOSFETを使ってダイオードのように動作しますが、電圧降下とリーク電流を大幅に低減します。

理想ダイオードには3つの主なアプリケーションがあります。1つはバッテリ動作機器の簡素な逆電圧保護です。これは単にバッテリとアプリケーション回路の間に直列に接続されるダイオードです。第2のアプリケーションは、高信頼性冗長電源のダイオードOR接続です。最後も同じダイオードOR回路ですが、携帯電話や多くのポータブル機器が備えているような、ボード上の充電式バッテリとACアダプタ間の選択回路用です。理想ダイオード(MAX16915など)は電源入力の過電圧保護にも使用されます。

上記3つのアプリケーションのすべてで、設計者は標準のダイオードからショットキーダイオードに移行することもできます。これは順電圧降下の低減に大きく貢献し、1Aの順方向電流での電圧が標準的ダイオードの1.1Vから約0.45Vへと低下します。しかし、理想ダイオードならその電流で85mVに低下し、しかもさほどコストはかかりません。さらに、理想ダイオードは比較にならないほど小型です。理想ダイオードICは消費電力を削減し、電圧損失が低減し(低電圧バッテリからの給電時に重要)、PC基板の占有面積が少なくなります。他にも、理想ダイオードはショットキーダイオードの大問題を解決します。ショットキーダイオードは逆リーク電流が非常に大きく、1A機器の場合で約1mAです。このリーク電流は、特に1次電池にとって問題となります。理想ダイオードの逆リーク電流は、通常は全温度範囲で1µA以下です。

理想を手に入れる方法は3つあります。自分で独自に作るか、外部FET用のドライバICを使用するか、またはFETを内蔵したデバイスを使用するかです。FETの駆動は、考えるほど容易ではありません。駆動回路はMOSFET両端の順電圧降下を制御し、発振なしで1つの経路から他の経路へのスムーズな電流転送を確保することが重要です。電源の障害または短絡が発生した場合、高速ターンオフによって逆電流過渡を最小限に抑えます。適切に実装された場合、理想ダイオードは逆方向のバッテリ状態、過電圧過渡、および突入電流に対するフロントエンド保護を提供することができます。外部FETを使用する理想ダイオードコントローラICは、最大5Aの電流定格および80Vまでの電圧定格のものが提供されています。

1つの優れた例

完全な理想ダイオードデバイスの優れた例はマキシムのMAX40200で、1.5V~5.5Vの電源電圧で動作し、最大1Aに対応し、小型0.73mm2の4ピンWLPまたはSOT23-5パッケージで提供されます。このデバイスは熱的な自己保護を備え、-40℃~125℃で動作します。ディセーブル時、MAX40200はいずれの方向にも最大6Vの電圧をブロックします。

The MAX40200 ideal diode current-switch

図1: MAX40200理想ダイオードの電流スイッチ

図1のファンクションダイアグラムは、内部FETの独自の記号を示しています。このpチャネルFETは、ゲートの駆動の他にも、MOSFETのドレーン-ソース間電圧を検出する追加の回路を備え、ボディダイオードの逆バイアスを維持します。

注意すべき点として、通常のダイオードとは異なり、「理想ダイオード」はACの整流には適しません。誘導性結合された60Hz ACを電源とするアプリケーションの場合は、回路の整流部分に従来のダイオードを使用してください。MAX40200は、アプリケーションで異なるDC電源間の切り替えに使用するように設計されています。このチップは最大100mAの順方向電流まで約20mVに抑えられた電圧降下を示します。それ以上の電流では、順電圧降下は最大定格順方向電流の1Aで約90mVまで増大します。この小さい電圧降下によって効率が向上し、バッテリ動作時間が大幅に延長されます。このICの動的応答については、アプリケーションノート「Static and Dynamic Behavior of the MAX40200 in a Diode ORing Application」で詳述されています。また、評価キットのMAX40200EVKITが利用可能です。

たとえば、単四バッテリの容量は2セルの約3Vの場合で1Ahです。ショットキーダイオードが1Aで0.36V低下する場合、マキシムのMAX40200の低下はわずか0.09Vであるため、0.27Vの差によって0.27Whが節約されます。したがって、機器は1Aの最大負荷で15分間長く動作します。

図2: ポータブル機器の標準的な電源選択回路

このICのサーマルシャットダウン温度は約+154℃で、12℃のヒステリシスを備えています。電流が約500mAを超える場合は、この温度を超えないように設計に注意する必要があります。WLPパッケージの熱性能は実際にSOTパッケージを上回ります。

もう1つのICの例

理想ダイオードコントローラのMAX16141は、最初の例とは大幅に異なる役割を果たします。このチップは逆方向電流、過電流、入力過電圧/低電圧、および過熱状態に対するシステム保護を提供します。問題のある入力電源は切断され絶縁されます。このICは、広い3.5V~36Vの動作電圧範囲および低い5µA (typ)のシャットダウン電流によって車載アプリケーションに最適です(また、車載認定済みです)。

図3: 理想ダイオードコントローラのMAX16141のアプリケーション

図3の回路で、このICのチャージポンプはバック・ツー・バック外部nFETのゲートをソース接続より9V高く駆動します。高速動作コンパレータは、入力が出力電圧を下回ってから1µs (max)以内に逆方向電流フローをブロックします。RSとOUTの間の外付け電流検出抵抗は電流過負荷を監視します。最大電流は調整可能で、FETの選択によって決定されます。OVSETおよびUVSET入力は、入力過電圧および低電圧事象の設定ポイントを提供します。MAX16141は16ピンTQFNパッケージ(4 × 4 × 0.75mm)で提供され、-40℃~125℃で動作します。

理想ダイオードは、多数の設計に使用することができます。どこに使用すべきかを完全に理解している人がいないために、十分活用されていないように思われます。理想ダイオードは、時にはアンプに分類され、時にはパワーマネージメントに分類され、時には回路保護に分類されます。これらのデバイスにはエンジニアが注目するだけの価値があります。