アプリケーションノート5949

ウェアラブルの減量 - エネルギー効率の向上によるウェルネス機器のスリム化

筆者: Greg Steiert, Product Definer at Maxim Integrated

要約:この記事は、ウェアラブル機器の設計に固有の課題と、電力効率を最適化してサイズを小さくする方法について解説します。動作電圧の重要性と、適切な電圧レギュレータの選択方法について説明します。また、バッテリ残量ゲージの重要性についても説明し、最後にこれらの超ポータブル/ウェアラブルアプリケーション向けに最適化された高集積デバイスの例を示します。

はじめに

人々がエンターテイメントをエレクトロニクスに求めるようになると、身体活動が減少して健康問題につながる恐れがあります。技術は肥満の原因の1つになり得ますが、技術を使って肥満の問題と戦うこともできます。現在、活動レベルを報告することによって身体活動の増加を促す電子歩数計やフィットネストラッカーが販売されており、この方法の有効性を示すデータが存在します。

「ウェアラブル」フィットネストラッカーの選択肢は増え続けており、単なる歩数計を超えた身体活動の促進に役立つ機能が追加され続けています。しかし、これらの機器のいずれも、効果を発揮するためには使ってもらう必要があります。そして人々に使ってもらうためには、目立たず、手がかからないことが必要です。そこにあることを忘れるほど小型・軽量で、充電の手間を最小限に抑えるため充電1回ごとの動作時間が長いことが求められます。バッテリから得られるエネルギーはバッテリのサイズに直結しているため、機器のサイズと重量を増やすことなく充電間の時間を延長することは困難です。バッテリは通常ウェアラブル機器の中で大きな部品の1つであるため、設計に当たって電力バジェットとサイズ間の微妙なバランスが要求されます。

この記事では、性能を犠牲にすることなくウェアラブル機器のサイズと重量を低減する方法を検討します。これらの目標を達成することによって、これらの機器の利用率を高め、コミュニティ全体の健康にプラスとなる差を生むことができます。

設計の課題

これらのウェアラブルのサイズと重量を低減するには、バッテリから消費されるエネルギーを最小限に抑え、より小型のバッテリを使用可能にする必要があります。いろいろな意味でウェアラブルは他のバッテリ給電アプリケーションと同様ですが、サイズがはるかに小さいため、異なるレベルの最適化が要求されます。

ウェアラブル機器は、より消費電力の大きいタスクを迅速に処理し、できる限り多くの時間をアイドルスタンバイ状態で過ごす必要があります(図1)。しかし、ここで利用可能な電流は、通常のモバイルアプリケーションより大幅に小さくなります。50mAhrのバッテリから1週間の動作時間を得るには、平均電流が300µA以下である必要があります。電力バジェットの25%をスタンバイに割り当てると、75µA以下です。自己消費電流(IQ)が30µAのバックレギュレータはこのバジェットのほぼ半分を消費するため、低IQのリニアレギュレータの方が適切であるように思えます。スタンバイの消費電流は数十µAですが、システムには多くの場合ディスプレイや無線などの数十mAを必要とする高いピーク電流のペリフェラルがあります。バックレギュレータの効率がないと、通信の電力バジェットを満たすのは難しい作業になります。そのため、広いダイナミックレンジの負荷にわたって電力を最適化するには、トレードオフ間のバランスを取り、詳細な電力仕様に十分注意する必要があります。

図1. ウェアラブルモニター機器の3つの異なるモードでの予想動作時間を示す簡素な図 図1. ウェアラブルモニター機器の3つの異なるモードでの予想動作時間を示す簡素な図

電圧の低減

アクティブ状態でもスタンバイ状態でも、ウェアラブル機器内の部品は動作のための電力を必要とします。バッテリへの負荷を軽減するため、消費電力を最小限に抑える必要があります。電力は電圧と電流の積であり、電流は通常は電圧に比例することを忘れないでください。そのため、電力は多くの場合電圧の2乗に関連付けられます。図2のように、印加する電圧に対して抵抗の電流と消費電力をグラフにすると、電流と電力との非常に大きい差が明確に現れます。

図2. 電流および電力と電圧の関係(500Ωの抵抗の場合) 図2. 電流および電力と電圧の関係(500Ωの抵抗の場合)

アクティブデバイスは純粋な抵抗性負荷ではありませんが、コンデンサの充放電に必要な電流も印加する電圧によって決まります。多くのアクティブデバイスの電力は、印加する電圧の2乗の関数として変化します。KC5032オシレータのような簡素なアクティブデバイスの電流および消費電力と、抵抗の電流および消費電力を比較することによって、この例を見ることができます(図3)。この電圧の2乗という関係によって、電圧を少し低下させるとW当りの計算パワーが急激に向上する理由が部分的に説明されます。また、変換が非効率で入力電流は基本的に出力電流に等しいとは言え、リニアレギュレータの追加によって消費電力を低減することができる理由も説明されます。

多くの機器は、省電力やその他の理由から電圧を内部でレギュレートします。内部レギュレーションはほとんどの場合リニアで、電流の変動を最小限に抑えます。それにも関わらず、全体の消費電流は依然として入力電圧とリニアな関係になります。一般に、システム内のほとんどの機能で消費電力を最小限に抑えるには、入手可能な最も低電圧の部品の中から選択し、入力電圧範囲の下限でそれらを動作させることが通常は有効です。

図3. オシレータと抵抗の電流と消費電力の比較 図3. オシレータと抵抗の電流と消費電力の比較

適切なレギュレータの選択

適切な動作電圧の選択が重要である一方、その電圧を生成するための適切なレギュレータの選択も同様に重要です。前述のとおり、機器内のリニアレギュレータは内部回路が消費する電流の低減を可能にすることによって、消費電力を低減することができます。しかし、リニアレギュレーションでは電圧低下の利点が完全に活用されません。レギュレータを流れる電流が減少するため電力は低減されますが、消費電力は依然として入力電圧と電流の積です。必要な電力は出力電圧と電流の積のみで、残りの電力(電流と入力-出力電圧間の差の積)はリニアレギュレーションによって消費されます。

電圧低下の利点を完全に活用するには、スイッチングレギュレータが必要です。一般的なスイッチングレギュレータは、スタンバイ電力バジェット全体を容易に消費します。これらのデバイスはスタンバイ状態で過ごす時間の割合が非常に高いため、以前はアクティブ時の効率を犠牲にして低IQのリニアレギュレータを使用する必要がありました。幸いなことに、現在は1µA以下という低IQのバックレギュレータがあるため、アクティブ時とスタンバイ時の効率のトレードオフは不要です。

これらの低IQレギュレータへの移行によって、バッテリ電流は非常に大幅に低減します。部品が1.8Vで動作可能で、電源が平均電圧3.7Vの再充電可能リチウムポリマーバッテリの場合、バッテリ電流をほぼ半分に削減することができます。しかし、バックレギュレータは常に最適なソリューションではなく、特に出力電圧が入力電圧の80%以上の場合には適しません。バックレギュレータの効率は多くの場合に約90%です。3.7Vから3.2Vにレギュレートする場合、リニアレギュレータでも効率が85%になりますが、リニアレギュレータはインダクタを必要としません。図4のように効率と出力電流の関係をグラフにすると、1mA以下の負荷用に1.8Vにレギュレートする場合、1µAのバックレギュレータが明らかに有利です。しかし、3.2Vにレギュレートする場合はほとんど差がないことに注意してください。これらのデバイスは非常に多くの時間をスタンバイ状態で過ごすため、1.8V出力の場合は1µAのバックレギュレータが最良の選択肢です。それにもかかわらず、3.2V出力の場合は少ないボードスペースで実装可能なリニアレギュレータの方が良い選択肢になります。すべてのスイッチングコンバータが同じではないことを忘れないでください。特定の動作条件下で、コンバータの動作を注意深く検討してください。

多くのマイクロコントローラはレギュレータを内蔵していますが、消費電力の最小化にとって内蔵レギュレータは常に最良の選択肢ではありません。外付けレギュレータと同様に、内蔵レギュレータについても詳細を検討することが重要です。コア電圧が1.8V以下に低下すると、リニアレギュレータからスイッチングレギュレータに移行することでコア消費電力を半分以下に削減することができます。多くのマイクロコントローラが内蔵レギュレータをディセーブルする機能を備えているのは、まさにこのためです。内蔵レギュレータが最適であると仮定するのは危険であり、何であれマイクロコントローラがコアレギュレーション用に提供しているものを単純に使用したいという誘惑に負けると、大幅な電力のペナルティが生じる可能性があります。

図4. さまざまな出力電圧でのレギュレータの効率の比較 図4. さまざまな出力電圧でのレギュレータの効率の比較

バッテリを理解する

最悪のユーザー体験の1つは、機器が突然動かなくなることです。歩数計を付けたランナーは、「でもバッテリ表示はまだ十分みたいなのに」と嘆くでしょう。利用可能な充電残量があることをバッテリインジケータが示しているときに機器がシャットダウンするとは、誰も予想しません。そのため、インジケータが高精度であることが非常に重要です。ユーザーに報告する利用可能な充電残量から、バッテリの充電状態(SOC)ステータスの不確実性を引いておく必要があります。充電中に最小時間を保証するには、測定の不正確さに対応してバッテリを「オーバーサイズ」にする必要があります。

システム設計でのバッテリの重要性を考えると、バッテリの状態をどのように測定するかの選択は、サイズ、コスト、および全体的なユーザー体験に直接影響します。ウェアラブル機器の電流は一般に小さく、クーロンカウント方式はまったく現実的ではありません。検出電圧は非常に小さいためマイクロパワーアンプでも適切ではなく、頻繁な測定が必要になるため非常に多くの電力を消費します。電圧監視方式が実現可能な唯一のソリューションです。

再充電可能リチウムバッテリは、電圧のみによる監視が非常に困難です。単にADCでバッテリ電圧を読み取ってもバッテリのSOCは分かりませんが(図5を参照)、幸いこれらのアプリケーションの要件を満たすための専用に設計された残量ゲージがあります。マキシム独自のModelGaugeアルゴリズムは、最高の精度でバッテリ容量の報告を提供します。薄型の形状の維持や充電間の時間の延長のために努力しているとき、高精度のバッテリSOC測定が非常に貴重なことは、ほとんどの人が同意するはずです。

図5. 直接的なバッテリ電圧とSOCの違い 図5. 直接的なバッテリ電圧とSOCの違い

すべてを1つにまとめる

小型のウェアラブル機器の設計の課題は、通常のモバイルアプリケーションとは異なる最適化を要求します。以前はどうでもよいノイズと考えられていた部品や仕様が、今では性能要件に適合するための非常に重要な要素になっています。新しい電力の制約に合わせて個々の機能を最適化するのみでなく、それらすべてを可能な限り最小のスペースに実装する必要があります。これらの機器には、ロジックや受動部品さえ取り付ける余裕がほとんどないため、集積化が非常に重要になります。

幸いなことに、これらのウェアラブルアプリケーション向けに最適化された集積デバイスがあります。図6に示す製品のように、電力レギュレーション、バッテリ管理、および監視回路機能を小型WLPパッケージに組み合わせた、シングルチップウェアラブル、充電管理ソリューションが利用可能です。より低い電圧を最適なレギュレーションで実現するため、このデバイスはIQが1µA以下の1.8Vバックレギュレータと低IQの3.2V LDOの両方を内蔵しています。高精度のバッテリ監視を実現するため、ModelGauge技術を利用しています。また、ディスプレイ/バックライト電源、電源オン/オフなどの管理機能、シーケンス制御など、これらのウェアラブルアプリケーションで一般的に見られるその他の機能も内蔵しています。ウェアラブル充電管理ソリューションのような製品は、メーカー各社がバッテリをさらに活用し、自社のフィットネストラッカーを軽量化するために役立ちます。それによって、最適な電源を備えた、より小型・軽量で、より目立たないウェアラブル機器を提供し、人々に実際に使ってもらうことが可能になります。

図6. バックレギュレータ、高精度SOCを実現するModelGauge技術、およびウェアラブルフィットネス機器に期待される全機能を内蔵したウェアラブル充電管理ソリューション(この例はMAX14676) 図6. バックレギュレータ、高精度SOCを実現するModelGauge技術、およびウェアラブルフィットネス機器に期待される全機能を内蔵したウェアラブル充電管理ソリューション(この例はMAX14676)



ModelGaugeはMaxim Integrated Products, Inc.の商標です。



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