アプリケーションノート5663

受動部品は実はそれほど受動的ではない:パート1、コンデンサ


要約:トランジスタや集積回路などの能動部品は、電源からのエネルギーを使用して信号を変化させます。逆に、抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタなどの受動部品は電力を消費しません—あるいは、そういうことにしたいと我々は思っています。しかし、実際にはすべての受動部品は寄生成分を含んでいるため、予期せぬ形で信号を変化させる可能性があり、実際に変化させます。3部構成のシリーズの第1部であるこのアプリケーションノートでは、寄生容量について解説します。

この記事と同様の記事が「Electronic Design」の2013年6月4日号に掲載されています。

はじめに

能動部品と受動部品—エンジニアリングデザインは本当に明確に2つに分かれるのか?
トランジスタや集積回路は、電源からのエネルギーを使用して信号を変化させるため、能動部品と考えられます。一方、コンデンサ、抵抗、インダクタ、コネクタ、さらにはプリント基板(PCB)のような部品は、電力を消費するようには思えないため、受動部品と呼ばれています。しかし、これらの一見すると受動的な部品は、すべて寄生的部分を含んでいるため、予期せぬ形で信号を変化させる可能性があり、実際に変化させます。そのため、一般に受動部品とされている部品の多くは、実際にはそれほど受動的ではありません。受動部品に関する3部構成のシリーズのパート1であるこのアプリケーションノートでは、コンデンサの能動的な役割について解説します。

それほど受動的ではないコンデンサ

受動的とは、不活性および/または非能動的として定義することができます。しかし、受動電子部品は予期せぬ形で回路の能動的部分になる場合があります。したがって、純粋に静電容量のみのコンデンサというものは存在しません。すべてのコンデンサは、本質的に寄生成分を備えています(図1)。
図1. コンデンサ(C)とその最大の寄生成分
図1. コンデンサ(C)とその最大の寄生成分
図1の能動的な寄生成分を詳しく見てみましょう。「C」と書かれたコンデンサのみが、我々の望むものです。その他の成分は、すべて不要な寄生成分です1。並列抵抗(RL)はDCリーク電流を発生させ、能動回路のバイアス電圧の変化、フィルタのQ値の低下、およびサンプル/ホールド回路の保持能力の喪失を招く可能性があります2。等価直列抵抗(ESR)は、等価直列インダクタンス(ESL)によって同調回路(すなわち、自己共振する回路)が形成されるため、リップルを低減し高周波数信号を通過させるコンデンサの能力を低下させます。これは、自己共振周波数から上でコンデンサが誘導性を示し、電源からグランドへの高周波数ノイズをデカップリングすることができないことを意味します。誘電体は圧電性を示す場合があり、振動(AC)によるノイズを追加して、Cのコンデンサの内部にバッテリがあるように見えます(図には示されていません)。はんだの冷却の応力による圧電効果で、コンデンサの値が変化する可能性があります。分極電解コンデンサは直列の寄生ダイオードも含む場合があり(図には示されていません)、それらのダイオードが高周波数信号を反射してバイアスの変化や不要な歪の付加を発生される可能性があります。
小さいバッテリのSB1~SB4は、異種の金属(寄生熱電対)の接合によって電圧が発生するゼーベック効果3を示しています。試験装置を接続する場合、共通のコネクタのゼーベック効果を考慮する必要があります。Jim Williamsのアプリケーションノート4の付録J、図J5は、BNCとバナナコネクタの組み合わせによる熱電位が0.07µV/℃~1.7µV/℃の範囲であることを示しています。この電位差は、我々が実験室で毎日行っているような単純な接続の場合です。この一見小さいオフセットゲインを千倍すると、1.7mVになります。しかもそれは実際に何か生産的なことをする前の話です。
SB2およびSB3は、コンデンサ内部の箔とリードの接点、または表面実装部品の金属皮膜とメッキまたははんだの接点を表します。SB1およびSB4は、部品からはんだを介して銅のPCBトレースへの接合部を示します。はんだは、以前は単純に63%の鉛と37%の錫でした。しかし現在は、鉛フリーRoHSはんだに大幅な違いがあり、コンデンサ周辺の電圧に影響する可能性があるため、合金の成分について質問する必要があります。
誘電吸収(Dielectric absorption、DA)、またはBob Peaseが「浸出」と呼んでいるものは、無限個の異なるRC時定数(DA1~DAINFINITY)としてモデル化することができます。それらの時定数は、それぞれ抵抗(RDA)とコンデンサ(CDA)で構成されます。Bob Peaseは「浸出」が問題になる実際的な例をいくつか示していますが、筆者は付録に記した浸出に関する面白い経験を思い出します。
「さて、カラーTVをオフにして裏のカバーを開ける場合、作業を開始する前に最初にしなければならないことは何でしょう?ドライバにアースストラップを付け、HVプラグのゴムキャップの下に差し込んで、CRTを放電させることです。よろしい、これで容量が放電されたわけですが、そのまま約10分間放置すると、どのくらいの電圧が「浸出」してブラウン管の「容量」に戻ってくるでしょうか? 2度目に放電させたときに、明確なアークが発生するのに十分なほどです。これが、私が誘電吸収と呼んでいるものです」。5
そのため、コンデンサの容量は印加される電圧によって変化する可能性があります。さらに、標準的な経年劣化、温度依存性、およびさまざまな方法でコンデンサが物理的に破損する場合6を加えると、この単純な受動部品がはるかに複雑なものになります。
次に、デカップリングコンデンサと不十分なグランドの組み合わせで発生する、コンデンサにとって最も一般的な問題である自己共振についても触れる必要があります。グランドが不十分な場合は、どんなコンデンサも適切に機能しません。容量の自己共振は、図1に示すESLの影響が大部分を占めます。しかし、PCB経由の影響も無視してはいけません。無線周波数では、これらは小型コンデンサの自己共振点に影響します。図2の1µFのグラフに注目してください。
図2. 3つのコンデンサの自己共振(グラフの一番低い点)。グラフは、すべてのコンデンサの動作が同じではないことを示しています。左側で線(インピーダンス)が低下している間は、コンデンサはコンデンサとして動作します。しかし、最も低い点に達して上昇し始めるとコンデンサはインダクタ(ESL)になり、デカップリングコンデンサとしての効果を失います。
図2. 3つのコンデンサの自己共振(グラフの一番低い点)。グラフは、すべてのコンデンサの動作が同じではないことを示しています。左側で線(インピーダンス)が低下している間は、コンデンサはコンデンサとして動作します。しかし、最も低い点に達して上昇し始めるとコンデンサはインダクタ(ESL)になり、デカップリングコンデンサとしての効果を失います。
1µFのグラフは、4.6MHzで最小値になっています。その周波数から上ではESLが大部分を占め、コンデンサはインダクタのように動作します。ここから、デカップリングコンデンサは高周波数にとって双方向の通路であることがわかります。電源バス上の高周波数はグランドと共有され、逆にグランド上の高周波数は電源バスと共有されます。コンデンサは電源とグランド間の差を均一化します。
信号周波数とコンデンサについてさらに考えると、我々は自分が作る高調波または側波帯のことを忘れていることがあります。たとえば、現実の50MHz方形波SPIクロックは、無限の奇数次高調波を伴います。ほとんどのシステムでは(ただしすべてのシステムではありませんが)、第5次高調波以上の高調波はエネルギーが非常に小さく、ノイズフロアより低くなるため、無視することができます。しかし、半導体の中で高調波が整流され、新しい、より低い周波数干渉に変換される場合は、それらの高調波も問題を引き起こす可能性があります。

製造誤差の操作

図2は、すべてのコンデンサが均一に作られてはいないことを示しています。一般に、高品質コンデンサは非常に再生産性が高いのに対して、安価なコンデンサの中には低コスト化と引き換えに製造誤差を大きくしているものがあります。一部のメーカーは、誤差の小さいコンデンサを「選別」 (図3)または選択して、プレミアム価格で販売しています。そのコンデンサをシステム内で時間または周波数を設定するために使用する場合、これが有害になる可能性があります。
図3. 製造誤差の選別(またはソート)は、さまざまな形でコンデンサの性能に影響します。
図3. 製造誤差の選別(またはソート)は、さまざまな形でコンデンサの性能に影響します。
図3の実線(黒)のグラフは、適切な製造プロセスの標準偏差です。マキシム・インテグレーテッドのアプリケーションノート4301 「The Zero-Transistor IC, a New Plateau in IC Design」では、抵抗に関してこの図を使用しましたが、このデータはコンデンサにも同様に当てはまります。製造誤差の変動に応じて、それぞれの選別に含まれる製品数が変化します。誤差が右に移動すると(緑の点線)、誤差1%の製品ができなくなります。2峰性分布(グレーの破線)になることも考えられ、その場合は5%および10%の製品が増え、誤差1%および2%の製品は少なくなります。
選別によって、誤差2%の製品には-1~-2および+1~+2の製品のみが含まれる(つまり、1%の製品は含まれない)ことが保障されるように「思えます」。また、誤差1%および2%の製品は5%のグループから取り除かれるように「見えます」。「思えます」あるいは「見えます」と言ったのは、販売量および人間の性質も混合率に影響するためです。たとえば、ある工場で誤差5%のコンデンサを出荷する必要があり、しかし今月はその需要を満たす十分な数が揃わないとします。しかし、誤差2%の製品は余っています。そこで、今月はそれらを5%の製品に混ぜて出荷することにしました。明らかに意図的な人間の介入によって、統計値や方式が歪曲される可能性があり、実際に歪曲されます。
これは受動部品であるコンデンサにとって何を意味するでしょう?我々が期待する誤差、たとえば±5%には、中央に±2%の穴があるということを理解する必要があります。コンデンサが重要な周波数やタイミングを制御する場合は、それを計算に入れて余裕を見込む必要があります。また、較正によってより広いばらつきを補正することを考える必要があるかもしれません。

はんだ付けが受動性能に与える影響

特に表面実装部品の場合、はんだ付けはコンデンサ内部にストレスを発生させます。そのストレスによって振動をともなう圧電電圧が発生し、さらにはコンデンサにひびが入ってあとで故障の原因になる可能性があります。
適切なリフローはんだ付けは、見事な光景です。溶融するはんだの表面張力によって、部品がまるで魔法のように回転して適切な位置に整列します。しかし、はんだの温度プロファイルが不適切な場合は、実際にデバイスが破損する可能性があります。コンデンサが墓石のように直立しているのを見たことはありませんか?これは、はんだの温度特性が不適切な場合に発生します。メーカーの推奨はんだプロファイルに常に従ってください。一部の部品はより温度に敏感なため、ボードの実装には融解温度の異なる2種類またはそれ以上のはんだが必要になる場合があります。最初に回路内のほとんどの部品が最も融点の高いはんだではんだ付けされたあと、「敏感な」部品がより低い温度ではんだ付けされます。工程の前半ではんだ付けされた部品があとで外れないように、適切な順序ではんだを使用する必要があります。

まとめ

コンデンサなどの受動部品について話すとき、これらのデバイスがすべて寄生成分を含んでおり、信号を変化させる可能性があることを忘れてはいけません。もちろん、その影響は信号の強度によって変わります。µV単位で測定するような場合は、グランド(スターポイント)、デカップリングコンデンサのシールド、ガーディング、レイアウト、ゼーベック効果、ケーブルの構造、およびコネクタのはんだ付けなど、すべてが重要になります。通常の回路図ではこれを省略していますが、小さいノイズや電圧について調べるまではそれで問題ありません。
受動部品のコンデンサも1つの部品に過ぎず、実際には見かけより能動的だということを忘れないでください。部品の寄生、許容誤差、較正、温度、経年変化、さらには組立て方法や寄生による微妙な影響があり、デバイスの性能に影響します。それを知った上で、多数のコンデンサによって積み重なる潜在的な誤差とを理解する必要があります。この3部構成のシリーズの今後のアプリケーションノートでは、抵抗、ポテンショメータ、スイッチ、そして意外なことに普通のPCBまで、一般に受動部品と呼ばれている他の部品について取り上げます。
最後に、AVXとKemetは寄生成分を明示しているコンデンサメーカーで、無料のSpiceツールを提供しています7。これらのSpiceツールを使用すると、コンデンサの実際の性能をグラフ化することができます。両社のウェブサイトにあるアプリケーションノートも非常に有益です。


参照:
Passive Components Aren’t Really So Passive (Part 2): Resistors
Passive Components Aren’t Really So Passive (Part 3): Printed Circuit Boards

参考文献

  1. コンデンサによって発生する歪については、「Capacitor Distortion Mechanisms」、TWEM (The Electric Web Matrix of Digital Technology)、www.co-bw.com/Audio_Capacitor_Distrotion_Mechanisms.htmを参照してください(注:URL中の「distrotion」という単語のスペルが間違っていますが、URLはこれで合っています)。
  2. Bob Pease、「What's All This Capacitor Leakage Stuff, Anyhow? 」、Electronic Design、2007年3月29日号、http://electronicdesign.com/analog/whats-all-capacitor-leakage-stuff-anyhow
  3. Jim Williams、「x」を使用してゼーベック接合を示しています。彼は並列経路の接合部を数え、わざとPCトレースをカットしたあとで再びはんだ付けして、同数の接合部を作っています。Jim Williams他著、アプリケーションノート86、「A Standards Lab Grade 20-Bit DAC with 0.1ppm/°C Drift」、http://cds.linear.com/docs/en/application-note/an86f.pdfを参照してください。また、Bob Pease、「Understand capacitor soakage to optimize analog systems」、http://yawp.com/ref-library/App%20Notes/Bob%20Pease/Understand%20capacitor%20soakage%20to%20optimize%20analog%20systems.pdfも参照してください。ゼーベック効果の一般的な情報については、最初にhttp://en.wikipedia.org/wiki/Thermoelectric_effectから読み始めると良いでしょう。
  4. Williams他著、「A Standards Lab Grade 20-Bit DAC」
  5. Bob Pease、「What's all this soakage stuff, anyhow? 」、Electronic Design、1998年5月13日号、http://electronicdesign.com/analog/whats-all-soakage-stuff-anyhow
  6. John Maxwell、「TECHNICAL INFORMATION, CRACKS: THE HIDDEN DEFECT」、AVX Corporation.
  7. Kemet®用のSpiceツールは、www.maximintegrated.com/calのページ最下部近くにあります。
  8. Keith Snook、「WHAT’S ALL THIS TRAPPED CHARGE AND DIELECTRIC COMPRESSION STUFF ANYHOW? 」、www.keith-snook.info/capacitor-soakage.html

付録

受動的と思われているコンデンサの誘電吸収、浸出、および放電

初めての電源トランスの測定とは違って、浸出に関する私の最初の体験は楽しいものでした。
私が10代のころ、近所の「ハム」 (20世紀半ばに使われていた、アマチュア無線家を指す用語です-年齢がばれてしまうでしょうか?)が自宅のガレージでTVを修理しました。私は彼から多くのことを教わり、その一部は実技を通して学びました。取り外した電源トランスがベンチの上に置いてあり、被覆を剥いだリード線が付いていました。彼は、同じベンチの上にあったオーム計で抵抗値を測定してみろと言いました。純真だった私は、2つのプローブをつかみ、それぞれのプローブを裸のリード線にはさみました。バシッ!オーム計の電圧はわずか3Vでしたが、誘導性キックバックの威力は、私に2度とそんな真似をしないように覚え込ませるのに十分でした。
浸出に関しては、彼は私をかばってくれました(彼の望みは私が学習することであり、私が死ぬことではなかったので)。今度は、彼はBob PeaseがやったようにCRTをアースし、数分後にどれだけの電荷が残っているかを示しました。次に私も同じことをして、電荷が非常に長く残ることに驚きました—まるで永遠に続くかのようでした(しばらくして、飽きてやめてしまったと思います)。DAの議論の続きは、Keith Snook8が取り上げています。それは、もっと注目されるべき重要なテーマです。
答えは、誰もが学んできたことの中にあります。無限に待たない限り、コンデンサを完全に充電することはできません。ほとんどの回路は、時定数の5倍が経過したあと電圧が印加している総電圧の99.3%になったときに事実上充電されたと考えられます。コンデンサが放電するときには、その逆が成立します。高電圧から始まるCRTの場合、長時間にわたって痛い電撃が発生し続けます。


KemetはKRC Trade Corporationの登録商標です。



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