チュートリアル5590

設計に最適なオーディオアンプを選択する方法

筆者: Robert Nicoletti, Applications Manager in the Audio Solutions Group

要約:オーディオ市場での要求は常に変化しているため、オーディオアンプのトポロジは多くの進化を遂げてきました。利用可能なオーディオアンプの種類やそれらの特長を知ることは、アプリケーションに最適なオーディオアンプICを選択するために不可欠です。

同様の記事が2013年4月24日に「EE Times」に掲載されました。

はじめに

オーディオアンプは小信号の振幅を実用的なレベルに増幅しますが、そのとき小信号の細部は維持します。これは、リニアリティと呼ばれます。アンプのリニアリティが高いほど、出力信号は真の入力を表現します。
アンプの性能に対するオーディオ市場の要求は常に変化しているため、オーディオアンプのトポロジは多くの進化を遂げてきました。その結果、設計者は利用可能なオーディオアンプの種類と、それぞれの特長を知る必要があります。これは、アプリケーションに最適なオーディオアンプを確実に選択するための唯一の方法です。このチュートリアルでは、現在利用可能なA級、B級、AB級、D級、G級、DG級、およびH級の各オーディオアンプの最も重要な特長について解説します。

A級アンプ

最もシンプルなオーディオアンプのタイプはA級です。A級アンプは、出力信号波形に関係なく伝導する(つまり、完全にはオフにならない)出力トランジスタ(図1)を備えています。A級は最もリニアリティの高いオーディオアンプのタイプですが、低効率です。そのため、これらのアンプは高いリニアリティを必要とし十分な電力が利用可能なアプリケーションで使用されます。
図1. A級オーディオアンプは、通常は高リニアリティですが低効率です。
図1. A級オーディオアンプは、通常は高リニアリティですが低効率です。

B級アンプ

B級アンプはプッシュプルアンプトポロジを使用します。B級アンプの出力は、正と負のトランジスタを備えています。入力を再現するために、各トランジスタは信号波形の半分(180°)のみ伝導します(図2)。これによって、アンプはゼロ電流でのアイドルが可能になり、A級アンプに比べて効率が向上します。
B級アンプには、効率の向上とともに音響品質が劣化するというトレードオフがあります。これは、2つのトランジスタがオン状態からオフ状態に遷移するクロスオーバーポイントが存在するためです。また、B級オーディオアンプは低レベル信号の処理時にクロスオーバー歪みが生じることも知られています。B級アンプは低電力アプリケーションにとって適切な選択肢ではありません。
図2. B級オーディオアンプの場合、出力トランジスタは信号波形の半分(180°)のみ伝導します。信号全体を増幅するために、2つのトランジスタが使用され、一方は正の出力信号を伝導し他方は負の出力信号を伝導します。
図2. B級オーディオアンプの場合、出力トランジスタは信号波形の半分(180°)のみ伝導します。信号全体を増幅するために、2つのトランジスタが使用され、一方は正の出力信号を伝導し他方は負の出力信号を伝導します。

AB級アンプ

A級アンプとB級アンプのトポロジの折衷案が、AB級オーディオアンプです。AB級アンプは、A級トポロジの音質をB級の効率で提供します。この性能は、ゼロ付近の信号出力、つまりB級アンプで非直線性が生じるポイントで伝導するように、両方のトランジスタをバイアスすることによって達成されます(図3)。小信号に対しては、両方のトランジスタがアクティブになるため、A級アンプと同様に機能します。大振幅の信号に対しては、波形の個々の半分に対して1つのトランジスタのみがアクティブとなることによって、B級アンプのように動作します。
AB級スピーカアンプは高信号対ノイズ比(SN比)、低THD+N、および最大65% (typ)の効率を提供します。そのため、ハイファイスピーカドライバとして最適な選択肢です。MAX98309MAX98310などのAB級アンプは、ポータブルメディアプレーヤー、デジタルカメラ、タブレット、および電子書籍リーダーなどで高い忠実度が必要な場合に使用されます。一部のヘッドフォンアンプは、ブリッジ結合負荷構成でAB級トポロジを使用します。1つの例として、ヘッドフォンアンプのMAX97220Aはオーディオ帯域全体にわたって非常に低いTHD+Nを提供するとともに、最大125mWの出力を実現します。MAX97220Aは、現在世界で最も広く使用されているAB級ヘッドフォンアンプの1つです。その他の例については、マキシムのAB級アンプをご覧ください。
図3. AB級アンプは、信号がゼロに近いときに伝導するように両方のトランジスタをバイアスします。これによって、これらのアンプはA級以上の効率を、B級より低歪みで提供します。
図3. AB級アンプは、信号がゼロに近いときに伝導するように両方のトランジスタをバイアスします。これによって、これらのアンプはA級以上の効率を、B級より低歪みで提供します。

D級アンプ

スマートフォン、MP3プレーヤー、およびポータブルドッキングステーションなどの携帯型モバイルオーディオ機器の普及にともなって、消費電力がより重要視されるようになっています。バッテリの寿命を延ばすために消費電力を低減する必要があります。D級アンプは、パルス幅変調(PWM)を使用してレール・ツー・レールのデジタル出力信号を可変デューティサイクルで生成し、アナログ入力信号に近似させます(図4)。動作時には出力トランジスタが完全にオンまたは完全にオフのいずれかになるため、これらのアンプは非常に高効率(多くの場合、最大90%以上)です。この方式では、他のアンプ形式で効率低下の原因となっているトランジスタのリニア領域がまったく使用されません。また、最新のD級アンプはAB級アンプに匹敵する忠実度も実現します。高効率なMAX98304MAX98400AなどのD級スイッチングアンプは、ポータブルアプリケーションで広く使用されています。その他の例については、マキシムのD級アンプをご覧ください。
図4. D級オーディオアンプは、再生の必要がある最も高いオーディオ信号より大幅に高い周波数のスイッチング波形を出力します。動作時には出力トランジスタが完全にオンまたは完全にオフのいずれかになるため、これらのアンプは非常に高効率です。
図4. D級オーディオアンプは、再生の必要がある最も高いオーディオ信号より大幅に高い周波数のスイッチング波形を出力します。動作時には出力トランジスタが完全にオンまたは完全にオフのいずれかになるため、これらのアンプは非常に高効率です。

G級アンプ

G級アンプはAB級アンプに似ていますが、2つまたはそれ以上の電源電圧を使用する点が異なります。低い信号レベルでの動作時には、G級アンプは低い電源電圧を選択します。信号レベルの増大とともに、これらのアンプは自動的に適切な電源電圧を選択します(図5)。G級アンプは必要なときにのみ最大電源電圧を使用するため、AB級アンプより高効率です。これに対して、AB級アンプは常に最大電源電圧を使用します。
ポータブルオーディオアプリケーションに共通する問題として、スピーカアンプで利用可能な電源電圧が限られています。G級パワーアンプは、チャージポンプを使用して電源電圧をブーストすることによってこの電源電圧の問題を解決します。例として、スピーカアンプのMAX9730は従来のダイナミックスピーカ用に最適化されおり、スピーカアンプのMAX9788はセラミックスピーカ用に設計されています。その他の例については、マキシムのG級アンプをご覧ください。
図5. G級アンプは必要なときにのみ最大電源電圧を使用するため、AB級アンプより高効率です。
図5. G級アンプは必要なときにのみ最大電源電圧を使用するため、AB級アンプより高効率です。

DG級アンプ

DG級アンプは、PWMを使用してレール・ツー・レールのデジタル出力信号を可変デューティサイクルで生成します。この点では、DG級アンプはD級アンプと同じです。しかし、DG級アンプはマルチレベルの出力段を使用して出力信号の大きさも検出します(図6)。そして必要に応じて電源レールを切り替えることによって、必要な信号パワーをより効率的に供給します。MAX98308などのDG級アンプは、スイッチングD級トポロジと同じデュアルパワーの概念を使用してさらに高い効率を実現します。その他の例については、マキシムのDG級アンプをご覧ください。
図6. DG級アンプは出力信号の大きさを検出し、必要に応じて電源レールを切り替えることによって、必要な信号パワーをより効率的に供給します。
図6. DG級アンプは出力信号の大きさを検出し、必要に応じて電源レールを切り替えることによって、必要な信号パワーをより効率的に供給します。

H級アンプ

H級アンプは電源電圧を変調し、出力段での電圧降下を最小限に抑えます。実装は、複数の個別電圧を使用する方法から無段階で調整可能な電源まで多様です。出力デバイスでの消費を低減する技法に関してはG級と似ていますが、H級トポロジは複数の電源を必要としません(図7)。
H級アンプは、一般に他のオーディオアンプの設計より複雑です。これらのアンプには、電源電圧を予測し制御するための追加の制御回路が必要です。MAX98090MAX98091などのオーディオコーデックICは、H級パワー構造を備えたAB級ヘッドフォンアンプを内蔵し、超低電力の、完全なオーディオソリューションを提供します。その他の例については、マキシムのH級アンプをご覧ください。
図7. H級オーディオアンプは、その電源に接続された出力デバイスでの消費を低減します。これによって、アンプは出力パワーレベルと関係なく最適化されたAB級の効率で動作することができます。
図7. H級オーディオアンプは、その電源に接続された出力デバイスでの消費を低減します。これによって、アンプは出力パワーレベルと関係なく最適化されたAB級の効率で動作することができます。

まとめ

現在一般的に設計に使用されているオーディオアンプの多数のタイプについて簡単に解説しました。明らかに、あらゆる種類の機器用のオーディオ回路を設計する場合に、そのアプリケーションに最適なオーディオアンプのトポロジを注意深く決定する必要があります。これらのさまざまな級のオーディオアンプについて十分に理解することは、自分の設計に最適なオーディオアンプを選択するために役立ちます。

 

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