チュートリアル742

インピーダンスマッチングとスミスチャート:基礎

© Jul 11, 2003, Maxim Integrated Products, Inc.

要約:スミスチャートを使用したRFインピーダンスマッチングに関するチュートリアル。反射係数、インピーダンス、およびアドミタンスをプロットすることで例を示しています。MAX2472のマッチングネットワーク例は、図式解法を使用して900MHzで設計したものです。

スミスチャートの信頼性はすでに実証済みであり、依然として伝送ラインのインピーダンスを求めるための基本的なツールになっています。


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実際にRFアプリケーションを実装しようとすると、必ず悪夢のような作業がつきまといます。その1つは、相互に接続されるブロックの各インピーダンスを一致させる必要があるということです。通常、これには、「アンテナから低ノイズアンプ(LNA)まで」、「パワーアンプ出力(RFOUT)からアンテナまで」、および「LNA/VCO出力からミキサ入力まで」が含まれます。マッチング作業は、「ソース」から「負荷」に信号とエネルギーを適切に伝達するために必要となります。

高周波の無線周波数では、スプリアス成分(電線のインダクタンス、層間の容量、および導体の抵抗など)が、マッチングネットワークに対して重大な、しかし予測できない影響を及ぼします。数十メガヘルツを超えると、多くの場合、理論的な計算とシミュレーションだけでは不十分です。実験室での実際のRF測定値、およびその同調効果を考慮して正しい最終値を決定しなければなりません。計算値は、構成のタイプと対象の部品の値の設定に必要となります。

インピーダンスマッチングを行うには、以下に示すように多くの方法があります。
  • コンピュータによるシミュレーション:複雑ですが使用が容易です。シミュレータはさまざまな設計機能に使用されるものであり、インピーダンスマッチング専用ではないからです。設計者は、インプットすべき多くのデータ入力や正しい書式を十分に理解しておく必要があります。また、出力される無数の結果の中から有用なデータを見つけ出す専門知識も必要となります。さらに、専用のアプリケーションでない限り、回路シミュレーションソフトウェアがあらかじめコンピュータにインストールされているということはありません。
  • 手動による計算:単調で退屈な作業になります。式が長く(「キロメートル」)、処理すべき数値が複素特性を備えているからです。
  • 直観力:この力は、長年RFの研究に没頭してきた人にのみ身に付くものです。要するに、スーパースペシャリストにのみ許される方法であるということです。
  • スミスチャート:この記事では、この方法について説明します。
この記事の主要な目的は、スミスチャートの構造と背景をもう一度見直して、実用的な使用方法の概要を示すことです。ここでは、マッチングネットワーク部品の値の算出などの、パラメータの実例も取り扱っています。もちろん、最大電力を伝達するためのマッチングだけが、スミスチャートで行える作業ではありません。最適なノイズ指数のための最適化、Q (Quality factor)の影響の確認、および安定度の分析評価などの作業を設計者が行う場合にも役立ちます。

図1. インピーダンスとスミスチャートの基礎
図1. インピーダンスとスミスチャートの基礎

まず最初に

スミスチャートの有用性を紹介する前に、RF状態(100MHz超)下でのIC配線における電波伝搬の現象について簡単におさらいしてみましょう。これは、PAとアンテナ間やLNAとダウンコンバータ/ミキサ間に存在するRS-485ラインなどの不定状態を考える場合に有効です。

よく知られていることですが、ソースから負荷への最大電力伝達を得るには、ソースインピーダンスが、負荷インピーダンスの共役複素数に等しくなければなりません。すなわち、次式のようになります。
RS + jXS = RL - jXL
図2. RS + jXS = RL</sub> - jXLを表した図
図2. RS + jXS = RL - jXLを表した図

この条件で、ソースから負荷に伝達されるエネルギーは最大になります。また、効率的な電力伝達を得るには、この条件で、負荷からソースへの反射エネルギーを回避することが必要になります。これは特に、映像ラインおよびRFやマイクロ波のネットワークなど、高周波環境で必要となります。

スミスチャートとは

スミスチャートとは、円形の図表で、多数の円がその上で交錯しています。これを正しく使用すれば、構造が複雑そうに見えるマッチングインピーダンスであっても、計算することなく求めることができます。必要な作業は、円に沿って値を読み取って追っていくだけです。

スミスチャートは、複素反射係数(ガンマとも呼ばれΓ記号で表します)の極座標図です。数学的には、1ポートの散乱パラメータs (すなわちs11)として定義されます。

スミスチャートは、インピーダンスマッチングを必要とする負荷を調べて作成しますが、そのインピーダンスを直接取り扱うのではなく、反射係数ΓLを使用して負荷の特性(アドミタンス、利得、および相互コンダクタンス)を表します。ΓLは、RF周波数を扱うときに特に役立ちます。

周知のように、反射係数は、反射波の電圧と入射波の電圧の比で定義されます。これを以下の図に示します。

図3. 負荷におけるインピーダンス
図3. 負荷におけるインピーダンス

負荷によって反射する信号の量は、ソースインピーダンスと負荷インピーダンス間の不整合の程度によって異なります。この数式は次のように定義されます。



インピーダンスは複素数なので、反射係数も複素数になります。

未知のパラメータの数を減らすため、アプリケーションの中で頻繁に見られるものや一般的なものは、値を固定すると便利です。ここでは、Z0 (特性インピーダンス)は多くの場合一定であり、実際の業界標準値(50Ω、75Ω、100Ω、および600Ω)を使用します。次に、正規化した負荷インピーダンスは、次式で定義できます。



このように簡素化することで、反射係数の式は、次のように書き直すことができます。



この式で、負荷インピーダンスとその反射係数との間の直接的な関係がわかります。残念ながら、この関係式の複素特性は実用的には役に立ちません。そこで、スミスチャートを使用することで、上式を一種のグラフ表現として表すことができます。

チャートを作成するには、この式を書き直して標準的な図形(円や漂遊線など)を抽出する必要があります。

最初に、式2.3を次のように書き直します。



および



式2.5の実数部と虚数部を等しくすることで、2つの独立した新しい関係式が得られます。



次に式2.6を操作することで、式2.8~2.13が導かれ、最終的に式2.14が得られます。この式は、中心座標が[r/r + 1, 0]で半径が1/1 + rの円の複素平面(Γr, Γi)において、(x - a)² + (y - b)² = R²の助変数方程式の形態で表される関係式になります。



詳細については、図4aを参照してください。

図4a. ある円上に位置する点はすべて、インピーダンスの実数部の値が同じであるという特性で表されるインピーダンスになります。たとえば円r = 1は、中心座標が(0.5, 0)で半径が0.5です。この円には、点(0, 0)が含まれますが、この点は反射がゼロの点です(負荷が特性インピーダンスにマッチングされています)。短絡は、中心座標が(0, 0)で半径が1の円の負荷として表されます。開回路負荷の場合、円は1つの点になります(中心が(1, 0)で半径が0)。これは最大反射係数1に相当し、この点では、全入射波がすべて反射されることになります。
図4a. ある円上に位置する点はすべて、インピーダンスの実数部の値が同じであるという特性で表されるインピーダンスになります。たとえば円r = 1は、中心座標が(0.5, 0)で半径が0.5です。この円には、点(0, 0)が含まれますが、この点は反射がゼロの点です(負荷が特性インピーダンスにマッチングされています)。短絡は、中心座標が(0, 0)で半径が1の円の負荷として表されます。開回路負荷の場合、円は1つの点になります(中心が(1, 0)で半径が0)。これは最大反射係数1に相当し、この点では、全入射波がすべて反射されることになります。

スミスチャートを作成するとき、多少の注意が必要です。中でも最も重要なものを以下に示します。
  • すべての円は、座標(1, 0)の同じ一意の点を通過します。
  • 抵抗がない0Ωの円(r = 0)が、最大の円になります。
  • 抵抗が無限大の円は、(1, 0)における点になります。
  • 負の抵抗はありません。もしこのような事態が1回でも(あるいは複数回)発生すれば、発振状態が生じている可能性があります。
  • 別の抵抗値を選択するには、この新しい値に相当する別の円を選択するだけです。

話を戻して

さて次に、式2.15~2.18を使用して、式2.7から別の助変数方程式を導き出します。結果は式2.19になります。



先ほどと同様、2.19は、中心座標が(1, 1/x)で半径が1/xの円の複素平面(Γr, Γi)における、(x - a)² + (y - b)² = R²の形の助変数方程式になります。

詳細については、図4bを参照してください。

図4b. ある円上に位置する点はすべて、インピーダンスの虚数部の値xが同じであるという特性で表されるインピーダンスになります。たとえば円x = 1は、中心座標が(1, 1)で半径が1です。すべての円(定数x)には点(1, 0)が含まれます。実数部の円とは異なり、xは正の場合もあれば負の場合もあります。これは、複素面の下側に鏡像化された同一の円があることで説明がつきます。すべての円の中心は、点1を通る垂直軸上にあります。
図4b. ある円上に位置する点はすべて、インピーダンスの虚数部の値xが同じであるという特性で表されるインピーダンスになります。たとえば円x = 1は、中心座標が(1, 1)で半径が1です。すべての円(定数x)には点(1, 0)が含まれます。実数部の円とは異なり、xは正の場合もあれば負の場合もあります。これは、複素面の下側に鏡像化された同一の円があることで説明がつきます。すべての円の中心は、点1を通る垂直軸上にあります。

チャートを完成するには

スミスチャートを完成させるには、2つの系統の円を重ね合わせる必要があります。これで、一方の系統の円のすべてが、他方の系統の円のすべてに交差することがわかります。r + jxの形態でのインピーダンスがわかれば、対応する反射係数を求めることができます。必要なことは、rとxの値に相当する2つの円の交点を見つけるだけです。

逆も可能

逆の操作も可能です。反射係数がわかれば、その点で交差する2つの円が求められるので、対応するrとxの値をその円で読み取ることができます。この手順を以下に示します。
  • スミスチャート上のスポットとしてインピーダンスを決定します。
  • そのインピーダンスの反射係数(Γ)を求めます。
  • 特性インピーダンスとΓを用いてインピーダンスを求めます。
  • インピーダンスをアドミタンスに変換します。
  • 等価のインピーダンスを求めます。
  • 希望の反射係数の部品の値を求めます(特にマッチングネットワーク内の素子。図7を参照)。

推測するには

スミスチャートの解法手法は、基本的にグラフを用いた方法であるため、解の精度は、グラフの精細度に直接依存します。スミスチャートで表すことのできる、RFアプリケーションでの例を以下に示します。

例:50Ωの終端器の特性インピーダンスと次のインピーダンスを検討します。

Z1 = 100 + j50Ω Z2 = 75 - j100Ω Z3 = j200Ω Z4 = 150Ω
Z5 = ∞ (開放回路) Z6 = 0 (短絡) Z7 = 50Ω Z8 = 184 - j900Ω

次に、正規化してプロットします(図5を参照)。各点は次のようにプロットされます。

z1 = 2 + j z2 = 1.5 - j2 z3 = j4 z4 = 3
z5 = 8 z6 = 0 z7 = 1 z8 = 3.68 - j18

図5. スミスチャート上に点をプロット
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図5. スミスチャート上に点をプロット

これで、図5のスミスチャートから反射係数Γを直接取り出すことができます。いったんインピーダンスの点をプロットすると(定抵抗円と定リアクタンス円の交点)、水平軸と垂直軸上で直交座標の投影値を読み取るだけです。これで、反射係数の実数部Γrと、反射係数の虚数部Γiが得られます(図6を参照)。

また、この例で提示された8つのケースを取り上げて、図6のスミスチャートから対応するΓを直接取り出すことができます。数値は次のようになります。

Γ1 = 0.4 + 0.2j Γ2 = 0.51 - 0.4j Γ3 = 0.875 + 0.48j Γ4 = 0.5
Γ5 = 1 Γ6 = -1 Γ7 = 0 Γ8 = 0.96 - 0.1j

図6. 反射係数Γの実数部と虚数部をX-Y軸に沿って直接取り出す
図6. 反射係数Γの実数部と虚数部をX-Y軸に沿って直接取り出す

アドミタンスを利用する

スミスチャートは、インピーダンス(抵抗とリアクタンス)を考慮に入れて作成するものです。いったんスミスチャートを作成すれば、これを使用して、直列および並列の両方の場合についてこれらのパラメータを分析することができます。直列に素子を追加する場合は簡単です。新しい素子を追加したときの効果を知るには、それぞれの値について円に沿って移動するだけです。しかし、並列に素子を追加する場合には、問題は別です。この場合には、追加のパラメータを考慮する必要があります。多くの場合、アドミタンスという観点から並列の素子を取り扱うと簡単になります。

周知のように、定義では、Y = 1/ZでZ = 1/Yです。アドミタンスは、mho (すなわちΩ-1)で表されていました(現在は、ジーメンスあるいはSで表されています)。またZは複素数なので、Yも複素数でなければなりません。

したがって、Y = G + jB (2.20)になります。ここで、Gは素子の「コンダクタンス」、Bは「サセプタンス」と呼ばれます。ただし、注意が必要です。論理的な仮定に従えば、G = 1/RおよびB = 1/Xの結論を得ることができますが、これは当てはまりません。この仮定を使用した場合、正しい結果が得られないということです。

アドミタンスを取り扱う場合に、最初に必要なことは、y = Y/Y0を正規化することです。これにより、y = g + jbとなります。この場合、反射係数はどうなるのでしょうか?これは、以下を実行することで求められます。



Gを表す式は、zについて符号が反対になることがわかっています。したがって、 Γ(y) = - Γ(z)となります。

zがわかれば、Γの符号を反転することで、(0, 0)から同じ距離、ただし反対方向に位置する点を見つけることができます。また、中心点のまわりに角度で180°回転することによっても同じ結果が得られます(図7を参照)。

図7. 180°回転した結果
図7. 180°回転した結果

もちろん、Zと1/Yは同じ部品を表すものですが、新しい点は、別のインピーダンスとして表示されます(新しい値は、スミスチャート内で新しい点や新しい反射値などを持ちます)。これは、プロットがインピーダンスのプロットであるからです。しかし実際には、新しい点はアドミタンスです。したがって、チャート上で読み取る値は、ジーメンスとして読み取る必要があります。

この方法は、変換を行うのには十分ですが、並列の素子を取り扱うときの回路の解を求める場合には正常に機能しません。

アドミタンススミスチャート

上述のように、インピーダンススミスチャート上のあらゆる点は、複素平面Γの原点を中心として180°回転することでアドミタンスに変換できることがわかりました。したがって、インピーダンススミスチャートの全体を180°回転することでアドミタンススミスチャートが得られます。これは、新たなチャートを作成する必要がないため、極めて便利なことです。すべての円(定コンダクタンスと定サセプタンス)の交点は、自動的に点(-1, 0)になります。このプロットを用いれば、並列に素子を追加する場合も簡単になります。数学的には、アドミタンススミスチャートの構成は、以下によって作成されます。



次に、この式を反転します。



次に、式3.3の実数部と虚数部を等しくすることで、2つの独立した新しい関係式が得られます。



式3.4を展開することで、次の式が得られます。



以前と同様、この式は、中心座標が[-g/(g + 1), 0]で半径が1/(1 + g)の円の複素平面(Γr, Γi)における、(x - a)² + (y - b)² = R² (式3.12)の形の助変数方程式になります。

さらに、式3.5を展開することで、以下が導かれます。



これも先ほどと同様、(x - a)² + (y - b)² = R²の形の助変数方程式になります(式3.17)。

等価のインピーダンス解

直列の素子と並列の素子が混合している問題を解く場合には、同じスミスチャートを使用し、zからyまたはyからzへの変換が存在する点のまわりにこのチャートを回転させることができます。

図8のネットワークを考えてみましょう(各素子はZ0 = 50Ωで正規化されています)。直列のリアクタンス(x)は、インダクタンスに対して正で、容量(キャパシタンス)に対して負になります。サセプタンス(b)は、容量に対して正で、インダクタンスに対して負になります。

図8. 多素子の回路
図8. 多素子の回路

この回路は簡素化する必要があります(図9を参照)。まず右側から始めましょう。ここには値1の抵抗器とインダクタがあるので、rの円 = 1でlの円 = 1となる直列点をプロットします。これは点Aになります。次の素子は、シャントの素子(並列)であるため、アドミタンススミスチャートに切り替えます(複素平面全体を180°回転します)。ただし、この操作を行うには、前の点をアドミタンスに変換する必要があります。これはA'になります。その後、面を180°回転します。これで、アドミタンスモードになりました。シャント素子は、0.3に相当する距離だけコンダクタンス円に沿って移動することで追加できます。この移動方向は反時計回り(負の値)でなくてはなりません。結果は点Bになります。次は、別の直列素子です。したがって、元のインピーダンススミスチャートに戻します。

図9. 分析のため図8のネットワークを各素子ごとに分離
図9. 分析のため図8のネットワークを各素子ごとに分離

戻すためには、以前と同様、前の点をインピーダンスに再変換しなければなりません(アドミタンスであるため)。変換すると、点B'が得られます。次に、前と同様の手順で、チャートを180°回転し、インピーダンスモードに戻します。直列の素子は、1.4に相当する距離だけ抵抗円に沿って移動することで追加できます。これは点Cになります。この移動は反時計回り(負の値)に行う必要があります。次の素子についても、同様の操作(アドミタンスへの変換と面の回転)を行った後、規定の距離(1.1)だけ定コンダクタンス円に沿って時計方向(値が正であるため)に移動します。これをDとします。最後に、再度インピーダンスモードに再変換して最後の素子を追加します(直列のインダクタ)。次に、必要な値zを求めます。これは、抵抗円0.2とリアクタンス円0.5の交点になります。すなわちzは、0.2 + j0.5として求められます。システムの特性インピーダンスが50Ωであれば、Z = 10 + j25Ωとなります(図10を参照)。

図10. スミスチャート上にネットワーク素子をプロット
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図10. スミスチャート上にネットワーク素子をプロット

ステップごとにインピーダンスをマッチング

スミスチャートのもう1つの機能は、インピーダンスマッチングを決定できるということです。これは、与えられたネットワークから等価のインピーダンスを見つけ出すという操作と逆の操作になります。ここでは、図11に示すように、2つのアクセス端(多くの場合、ソースと負荷)でインピーダンスが固定されています。目的は、適切なインピーダンスマッチングが得られるように、この2つのアクセス端の間に挿入するネットワークを設計することです。

図11. インピーダンスが既知で部品が未知という代表的な回路
図11. インピーダンスが既知で部品が未知という代表的な回路

一見したところでは、等価のインピーダンスを見つける場合と難しさは変わらないように思われます。しかし、問題は、マッチングネットワーク部品の無数の組み合わせによって、同様に結果を無数に生み出せる可能性があるということです。しかもその他の情報を考慮しなければならない場合もあるのです(フィルタタイプの構造、Q (Quality factor)、部品の限定選択など)。

これを達成するために選択する手法としては、所望のインピーダンスが得られるまで、スミスチャート上で直列素子とシャント素子を追加できることが必要になります。これはグラフで表すと、スミスチャート上で点を結びつける方法を見いだすことになります。ここでも以前と同様、手法を明らかにする最適な方法として、例を挙げて必要な事項を説明していくことにします。

目的は、60MHzの動作周波数でソースインピーダンス(ZS)を負荷(zL)にマッチングさせるということです(図11を参照)。ネットワークの構造は、ローパスのLタイプに固定されています(「負荷を値ZS (ZSの共役複素数)のインピーダンスに見せる方法」として問題をとらえる手法もあります)。以下に、解の見つけ方を示します。

図12. 図11のネットワークの各点をスミスチャートにプロット
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図12. 図11のネットワークの各点をスミスチャートにプロット

最初に、各インピーダンスの値を正規化する必要があります。これが与えられていない場合には、負荷/ソース値と同じ範囲にある値を選択します。Z0を50Ωと仮定します。これにより、zS = 0.5 - j0.3、z*S = 0.5 + j0.3、およびzL = 2 - j0.5になります。

次に、2つの点をチャート上に配置します。zLはA、z*SはDとします。

その後、負荷に接続する1番目の素子を決め(シャントのコンデンサ)、アドミタンスに変換します。これで、点A'が得られます。

コンデンサCを接続した後、次の点を表示すべき円弧部分を確認します。Cの値がわからないので停止する点はわかりません。ただし、方向はわかります。シャントのCであるため、アドミタンススミスチャート上で時計方向に移動することになります。値が見つかるまで移動します。これは点Bになります(アドミタンス)。次の素子は直列素子なので、点Bをインピーダンス平面に変換する必要があります。これで、点B'が得られます。点B'は、Dと同じ抵抗円上になければなりません。グラフ上では、A'からDへの解が1つあるだけですが、中間点Bも(したがってB'も)「設定して試す」ことで確認しておく必要があります。点BとB'が見つかれば、円弧A'~BとB'~Dの長さを測定できます。1つ目の長さで、正規化されたCのサセプタンス値が得られます。2つ目の長さで、正規化されたLのリアクタンス値が得られます。円弧A'~Bの測定値は、b = 0.78であるので、B = 0.78 × Y0 = 0.0156Sになります。 ωC = Bですから、C = B/ω = B/(2πf) = 0.0156/[2π(60 × 106)] = 41.4pFになります。

円弧B'~Dの測定値は、× = 1.2であるので、X = 1.2 × Z0 = 60Ωになります。ωL = Xですから、L = X/ω = X/(2πf) = 60/[2π(60 × 106)] = 159nHになります。

図13. MAX2472の標準動作回路
図13. MAX2472の標準動作回路

第2の例では、動作周波数900MHzにおいて50Ωの負荷インピーダンス(zL)でMAX2472の出力をマッチングします(図14を参照)。このネットワークはMAX2472のデータシートで示されたものと同じ構成を使用します。上図はシャントインダクタと直列コンデンサの整合ネットワークを示しています。このようにソリューションを見つけます。

図14. スミスチャートに点をプロットした図13のネットワーク
図14. スミスチャートに点をプロットした図13のネットワーク

まず最初に、S22分散パラメータを等価の正規化されたソースインピーダンスに変換します。MAX2472は50ΩとしてZ0を使います。したがって、S22 = 0.81/-29.4°はzS = 1.4 - j3.2、zL = 1、およびzL* = 1になります。

次に、2つの点をチャート上に配置します。zSはA、zL*はDとします。ソースに接続する最初の素子はシャントインダクタであるため、ソースインピーダンスをアドミタンスに変換してください。これで、点A'が得られます。

インダクタLMATCHの接続後に次の点が現れる円弧部分を確認します。LMATCHの値がわからないため、停止する点はわかりません。ただしLMATCH (およびインピーダンスへ戻る変換)の追加後のソースインピーダンスはr = 1の円上にあることがわかります。したがって、追加の直列コンデンサCMATCHによって、得られたインピーダンスをz = 1 + j0にすることができます。r = 1の円を原点を中心として180°回転させることで、r = 1の円上に対応するあり得るすべてのアドミタンス値をプロットします。この反射円と点A'を使った定コンダクタンス円の交点が点B (アドミタンス)になります。点Bのインピーダンスへの反射は点B'です。

点BとB'を見つけた後、円弧A'~Bおよび円弧B'~Dの長さを測定することができます。最初の測定値でLMATCHの正規化されたサセプタンス値が得られます。第2の測定値でCMATCHの正規化されたリアクタンス値が得られます。円弧A'~Bの測定値はb = -0.575で、B = -0.575 × Y0 = 0.0115Sになります。1/ωL = Bで、LMATCH = 1/Bω = 1/(B2πf) = 1/(0.01156 × 2 × π × 900 × 106) = 15.38nHなので15nHに四捨五入されます。円弧B'~Dの測定値はx = -2.81で、X = -2.81 × Z0 = -140.5Ωです。-1/ωC = Xであるため、CMATCH = -1/Xω = -1/(X2πf) = -1/(-140.5 × 2 × π × 900 × 106) = 1.259pFとなり、1pFに四捨五入されます。これらの計算値は部品の寄生インダクタンスおよび容量を考慮に入れず、データシートの仕様値であるLMATCH = 12nHおよびCMATCH = 1pFに近似の値です。

結論

ソフトウェアが豊富に存在し、また高速で高性能なコンピュータが利用できる今日の状況を考えると、基本回路を決定するのに上記のような初歩的で基礎的な方法を使用する必要があるのかどうか疑問に感じられるかもしれません。

しかし、エンジニアが本物のエンジニアに育つために真に必要なものは、単に学問的な知識だけではなく、あらゆる種類のリソースを駆使して問題を解決できる能力なのです。確かにプログラムにいくつかの数字を入力するだけで、簡単に解を出力させることができます。さらに、解が複雑で多面的な場合には、厄介な作業をコンピュータに実行させることができ、特に便利です。しかし、コンピュータのプラットフォームに移植された基本的な理論や原理およびその由来を十分に理解してこそ、エンジニアや設計者は、成熟し確信に満ちた専門家となり、またより信頼性の高い結果が得られるようになるのです。

この記事に類似した内容が「RF Design」の2000年7月号に掲載されています。

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